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「よかった!笛外れたみたいですね!」
「あ…顎も外れた…!」
『あー良かったー(棒読み)』
笛は見事に砕け、二人は解放された。(銀ちゃんの顎の事にも、百音さんの口から笛が抜けていない事にも深く考えないでおこう)
「…ってそれより早く逃げないとォ!!」
ホッと息をつく暇もなく、新八くんの叫び声に定春から逃げていた事を思い出し、私達は大江戸ドームへと入り込んだ。
「で、どうするんですか!?笛も壊れちゃいましたよ!!」
「…狛子!」
ドームの中を逃げ惑いながら新八くんが叫ぶと、阿音さんは一緒に走っていた小さな定春もとい、狛子を呼んだ。
「ワンワンッ」
「かくなる上は狛子を覚醒させて対抗させるしかないわ!百音ェ!」
「ピー」
「オンマカヤシャバザラサトバジャクウンバンコンハラベイシャーワン!」
二人は各々ミルクと苺を取り出すと、何かを唱えながら狛子へとそれを放った。狛子はミルクと苺をパクリと食べると身体から眩しい光を放ち出した。
「目覚めよ!狗神ィィ!!」
バリバリと稲妻のような音を立て、ゾワゾワと毛を生やし、メキメキと狛子の頭から角が現れていく。
(まさか、定春のような姿に…!)
「ぎゃおおおおお!!」
「『ちっさ!!』」
予想通り、狛子は定春のような狛犬の姿へと変身した。…だが、どうにもサイズ感が変わっていない事に私達からは不安が潰えないでいた。
「何ですかコレェェ!顔ゴツくなっただけで何も変わってないじゃないスかァァ!!」
私の心を代弁するかのように突っ込んだ新八くんに阿音さんは「甘く見ないで」と新八くんを見遣った。
「狗神は攻めを司る者と守りを司る者、必ず二体存在するの。狛子は守りを司る狗神。ちょっとやそっとじゃ抜けないわよ」
「わおぉおおおぉお!」
狛子は唸りながら、定春へと向かい合い大きく声を張り上げた。すると、私達と定春の間に透明がかった壁のようなものが現れた。
「!?これは…結界!?」
定春はお構いなしに私達へと向かってきていたが、狛子の結界によりそこから先へは進めないでいた。(何?さっきから一体…どうなってるの?)
「さっ時間を稼いでる間に早く!」
私と銀ちゃん達が呆気にとられていると、阿音さんがドームの奥へと進むように促し、私達は急いで後を追った。
「どうにかまだ結界は破られてないみたいね…」
私達はドームの奥、球場へとやってきた。息を切らしながら阿音さんが一息つくと私達を見回した。
「私に考えがあるの」
『あの、その前にいいですか』
「ん?」
阿音さんが続いて発した瞬間、私は手をあげた。
『出来れば…そろそろ事のいきさつを教えて下さい』