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ワァオォオオオンッ!
【ーというように、突如かぶき町に現れた巨大犬なんですが…】
プチン。
あれから3日。
定春は屋根を突き破ったまま、大きさが変わる事なく、かぶき町の一大ニュースへとなってしまっていた。その上、飼い主として映された銀ちゃん達も醜態をさらしてしまっていた。(銀ちゃんに至ってはチャック全開という物理的な晒しようだ)銀ちゃんと新八くんはスナックお登勢に訪れ、先程流れていたニュースを目にし、俯いた。
「…まいったなーオイ。まさか全国ネットでチャック全開してたとはよー。最近こんなんばっかだな」
「『そこかよ』」
「どうすんだい、こんな大事になっちまって」
流石はお登勢さん。いち早く状況を飲み込んでいたお登勢さんは深刻そうな趣で銀ちゃんへと尋ねた。
「定チャン饅頭モ全然売レネーシ、モウ出テケヨ。迷惑ナンダヨ、アンタラニイラレルト」
「オイ、誰の許可得て商品化してんだ。…だが、まーアンタらにも色々迷惑かけちまって。ここらが潮時かもな」
『一番の迷惑は家賃滞納って事忘れないでね』
「マナーも守れねー奴にペットを飼う資格はねーもんな」
『(コイツ無視しやがったな)で、どうするの?』
「捨テルニシロ、アンナ大キナ犬トナルト色々大変デスヨ」
「捨てる?」
キャサリンの言葉に眉間に皺を寄せた銀ちゃんは言葉を続けた。
「バカ言うな。途中で放り出すくらいなら最初から背負いこんじゃいねーさ」
『え、じゃあ銀ちゃん』
「あァ。どっか広いトコにでも引っ越すか」
『……』
銀ちゃんの言葉にどこか、胸の奥がざわめきを覚えた瞬間だった。
ズゴゴゴゴゴッ!
二階から聞き覚えのあったメキメキッとした音が鳴り、更に大きな音が聞こえると、突如家が地震のように揺れ始めた。
『なっなに!?』
「っなまえ、大丈夫か?」
いきなりの揺れに思わずバランスを崩した私はよろけて地面に倒れそうになるが銀ちゃんに何とか抱きとめられた。すぐに体勢を整えると私達は急いで家の外へと飛び出した。
『さっ…定春が……!?』
恐らく音を立てていたのは定春だ。そう思い、屋根へと顔を上げた瞬間、そこには最早犬ではなく神社に建てられているような狛犬の姿がそこにあった。(ん…?)ふと、定春の足下を見れば神楽ちゃんが顔から血を流し弱い力を振り絞り定春の尻尾にしがみついたのが見えた。
『神楽ちゃん!』
「あっオイ!!なまえ!!」
私はすぐさま二階へと続く階段を上り、そこから柵に立つと勢いよく屋根へと飛び乗った。チラ、と屋根下を見ると銀ちゃん達は狛犬へと変貌した定春にいち早く気付いたテレビのアナウンサー達に囲まれて身動きが取れないでいた。とりあえず今の状況を把握する為に、私は神楽ちゃんの傍へと駆け寄った。
『神楽ちゃん!一体どうしたの!?』
「なまえ!わからないヨ、突然定春が変身して…!定春!」
神楽ちゃんは目の上を怪我しているのか、流れる血を手で押さえ、私にそう話をしていると、突然定春が屋根から飛び降りた。
『ま、待って!定春!!』
私も突然の事に、なりふり構わず屋根から飛び降りるとなびいた定春の尻尾へとグッとしがみついた。