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「ハア…ハア…なんだここ?」
結局最後まで罠を罠だと認めないままに、息を切らしながら銀ちゃんと桂さんが通路の奥に現れた戸を開けると、そこはだだっ広い空間が広がっていた。
『…あっ!あそこ!』
「!エリザベス!無事だったか!!」
キョロキョロと辺りを見回せば、エリザベスの姿が視界に映った。私が指を差せ、ば桂さんがいの一番にエリザベスの元へと走り出した。
「!ダメ!!近寄っちゃ…」
「!!」
シュバババッ!!
その時、さっちゃんが異変に気付き、桂さんを制止するが既に遅くエリザベスの中から大量の苦無が飛び出てきた。(な、何か気持ち悪い!)
「ぬおおおお!!!」
私達は銀ちゃんに覆い被さられ何とか避ける事ができた。桂さんも間一髪にそれを伏せて避けるとゆっくりと顔をあげ、苦無が飛び出た事により無残にも布がボロボロになっていたエリザベスを見遣った。(可哀そうなんだけど…なんか気持ち悪い事になってる)
「エ…エリザベス…」
「…クク。残念だったな」
するとエリザベスの中からは、口調からして恐らく偽物なのであろう男の声がした。(うろ覚えだけど確かテレビで聞いた声はこんなんじゃなかったはずだし)そして、ガサゴソと音を立てながら一気にエリザベスの被り物が剥がされると、中から忍者のような格好をした男が現れた。
「エリザベスちゃんはここにいないよ」
「お前は…!?」
「……クク、久しぶりだな、猿飛あやめ」
男は問いかける桂さんから視線を外し、さっちゃんを見るとにやりと笑い、言葉を発した。さっちゃんも男を見ると驚いた顔をしていた。(忍者の恰好をしてると言う事は同業者…?)
「全蔵…!」
どうやら男は元お庭番衆の服部全蔵。お庭番衆の中でも最も恐れられた随一の忍術使いらしい。
「今はフリーでここの旦那に雇われててね。悪いが元同僚とはいえそっちにつくなら容赦はしねェ。ロクニンジャーだかなんだか知らねーが」
『(なんで名前知ってるんだ)』
「にわか忍者じゃ本物の忍者には勝てねーよ。いや、たとえ侍でもな」
服部全蔵がトントン、と音を立て合図をするといつの間にか現れた人物が四人、服部全蔵の元へと近付いてきた。
「俺達が、最強の五忍だ」
「韋駄天の剛!!」
「毘沙門天の修輪!!」
「弁財天の薫よん」
「広目天、松尾!!」
「摩利支天、服部全蔵。五人合わせてフリーター戦隊!シノビ5!!」
『…お先でーす』
「なまえちゃん!ダサいのはわかるけど、もうここまで来たから!ね、頑張ってお終わらせよう!」
『……』
(何なの。ホントもう江戸にはダサい奴しかいないんだろうか。お願いだから帰りたい帰りたい帰りたい)今すぐに帰りたくなった気持ちが強くなった私がくるり、と体の向きを変えて先程来た通路へ戻ろうとすれば新八くんに止められてしまい、仕方なく思い止まった。そんな私を余所に、どこからか先ほどテレビモニター越しに聞いた笑い声が聞こえてきた。
「ワーハッハッハッ!カーツラァァッ!!いや、ロクニンジャーよ!!年貢の納め時だな!シノビ5はいずれともお庭番を務めていた猛者達ばかり!貴様らがひっくり返っても勝てる相手ではない!カワイイエリザベスちゃんの目の前で朽ち果てるがいい」
シノビ5達の上にいた遠山珍太郎は本物のエリザベスちゃんを連れて、私達をニヤニヤと眺めていた。
「エリザベスぅ!!」
ガガガッ!
「!」
エリザベスの前では居ても立っても居られないのだろう桂さんがまたもや大声を張り上げたと同時に、鉄格子が私と銀ちゃんとさっちゃん、桂さんと新八くんと神楽ちゃんの間を割くように床からせり上がってきた。