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今日は朝から昼まで団子屋のバイトだった。朝起きて眠たい目を擦りながら用意して家を出る頃にはすっかり目は醒めていた。
『いらっしゃいませー』
「おゥ、なまえちゃん」
『こんにちは!』
「なまえちゃんもすっかりこの店の看板娘だなァ」
『いえいえ、まだまだですよ』
よく来るお客さんとはすっかり馴染みとなった私も大分要領が良くなってきたと褒められるようになった。
『いらっしゃいませ』
「みたらし団子15本と、柏餅20こくだせェ」
『あ、はいっ』
茶色い髪の男の人がやってきて、大量の注文をする。この店に雇われて初めてのことに思わず驚いてしまった。すると男の人は私の考えていたことがわかったのか、クク、と笑った。
「まさか一人で食べるとか思いやした?」
『あっいえ、そんな事は……少し…』
「ふっ」
一度否定したが実際に思ったことには嘘をつけず恥ずかしそうに顔を俯かせると男の人はまた笑った。
「正直な人ですねィ。いつもは違うとこで買ってたんですけど、生憎休みでしてねィ。ま、たまにゃァ違うとこで買ってみようと思いやしたが、アンタ気に入りやした。また来まさァ」
ニッコリと爽やかに笑い、団子を受け取った男の人に私は急いで頭を下げて見送った。(何が気に入られたんだろ…変な人)