1 神楽 side
「そーかィ。あのチャイナ娘星に帰っちまったのか」
「…ええ。僕も止めたんだけど…銀さんがやっぱり親の元にいるのが一番いいって」
『まだ神楽ちゃんも幼いしね。…一緒にいれる内はいた方が私もいいと思うし…』
「まーあんな根無し草の所にいるよりはマシだわな」
「フン、うるさいガキだったけどいなくなったらいなくなったで寂しいものがあるね」
(ムフフ。皆スッカリ落ち込んじゃって)
先日、私はパピーと帰る事になったが、パピーは私を大事にすると言いながら置いていった。銀ちゃんの事を認めたのだろうか。それが、パピーなりに私を大事にする方法だったのだろう。
さて、一件落着したはいいが、このまま皆の前に現れるのは何だかつまらない。私はそう思うと暫く身を隠す事を考えた。
皆が寂しさで一杯になった頃に出てきてやろう。
そんな思いで私はスナックお登勢の窓から皆を覗き込んでいた。
思い知るがいいネ。お前達にとって私がいかに大切な存在であったかを!
…それにしても一番肝心な奴がいないネ。どこ行ったあのモジャモジャ?
その時、店の奥の厠の戸が開いた。
厠か。さては…便所で一人悲しみに打ちひしがれ泣いてたアルか。そうやって存分に悲しみやがれ。
「あーなんでこんな事になっちまったかな」
銀ちゃんは厠から出てくると、顔を手で覆いそう呟いた。(眼でも腫れたアルか?)私はそんな事を思いながら笑いそうになるのを抑えた。
「やべーよ、オイ。やっぱ明らかに腫れてるみたいなんだけど。大事なとこが」
私は思いきり背中から地面へと落ちた。