Rocky and Funny!! | ナノ


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あれから星海坊主さんが目を覚ますと、後から真選組もやってきて事態は収まった。ターミナルは暫く運営を休止するらしいが、暫くすればまたいつもの江戸に戻るだろう。

「おい、神楽は?」
「救護班に手当て受けてる」
『そうですか』
「…結構な深手だったんでな」



『てかアンタら大事な部分腫れても知らないからね』



私と銀ちゃんは、星海坊主さんとえいりあんの残骸を見ていた。すると二人はいきなり用を足し出した。私はそれに背中を向け座って呆れてため息をついていた。

「アンタも手当てしてもらえよ」
「だからこの左腕は元から義手だって言ってんだろ…。新調しなきゃな」
「腕じゃねーよ。頭だ」
「どういう意味だ」
「そーゆー意味だ」
「そーか。あーゆー意味か?殺すぞ」
『ちょっと銀ちゃん、失礼だよ。もう全部なくなっちゃったんだから』
「オメーも失礼だよ。かァー、とうとう腕だけじゃなく毛までなくなっちゃったな〜」
「そのうち生えてくるさ」
「腕が生えるかよ」
「腕じゃねーよ。頭だ」
「そーか頭か。アレ?お前頭の事しか喋ってねーじゃねーか。殺すぞ」
『ちょっと銀ちゃん、失礼だよ。もう生えてくる訳ないでしょ』
「オメーが一番失礼だなオイ!……まァでもな、こいつは両方俺にとっちゃ戒めなのかも知れねーよ」



「戒め?」

用を足し終えた二人に私は向き直り、星海坊主さんへと顔を向けた。



「こいつァ、てめーのガキにやられたのさ」
「『!』」

星海坊主さんの言葉に私と銀ちゃんは驚いた。

「神楽じゃねーぞ。上にもう一人いてな。こいつがとんでもねェ性悪でよォ。いや…性悪というか夜兎の血を忠実に受け継いだというか、闘争本能の塊のようなガキでな」
『……』

その話を聞いて私はふと、お登勢さんの元に引き取られるほんの少し前に出会った男の子を思い出した。あまり容姿は思い出せなかったが、闘う事が大好きで、自分はそういう星に生まれたと話をしてくれた事は覚えている。(今思えば、あの子も夜兎とか、そういう天人の子だったのかな?)



「いつの頃か消えた、そんな古の慣わしを野郎は実践しようとしやがったのさ。天下の星海坊主の首を…殺ろうとしやがった」
『!』
「驚いたか?だが、俺達夜兎ってのはそういう種族なんだよ」

正直、そんなの私にはありえない話だった。その後に話してくれた星海坊主さんの話にも鳥肌が立った。自分の親、自分の子供を殺せるものなのだろうか。(…あったり、するのが現実なのか)

「神楽が止めなければ確実に殺してた。あん時の俺を見る奴らの怯えた眼は、今でも忘れられねー」
「『……』」

私と銀ちゃんは星海坊主さんの話を黙って聞いていた。神楽ちゃんまでもがいつか、自分を襲ってくるんじゃないか。その時、自分は自分の中の獣を抑える事ができるのかと。家族を壊す事が怖くて家に寄り付けなくなったらしい。やはり、星海坊主さんは家族を愛していたんだと。

「あの時、俺を止めてくれたのも、いつも俺を支えてくれたのも神楽だ。俺はそんな神楽を何一つ信じちゃいなかったんだ。俺は結局自分しか見ちゃいなかった。自分を見て神楽を見たつもりでいた。俺と神楽は違う。…アイツは…アイツは俺なんかよりずっと強い奴なんだよ。…それを、俺って奴は…。完全に父親失格だ。…いや、親父と思ってるのは俺だけでアイツは俺みてーな奴の事親父とさえ思ってねーかもしれねーな」




「……」

星海坊主さんがそう言い終えると銀ちゃんは懐から手探りで一枚の手紙を取り出した。






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