19
『!ねェ、コレ…』
その時、私は思わず二人を呼び寄せる。足下には大きな穴が空き、そこにはえいりあんの塊のようなものがあった。
「こりゃあ…」
「核だ。寄生型えいりあんの中枢…こんなデケーのは初めて見るが、ターミナルのエネルギーを過度に吸収して肥大化し船底を破っちまったようだ。アレを潰せばこいつを止めら…」
「!」
『…どうやら、簡単にはいかないようだね…』
えいりあんの核を皆で見下ろしていると、その中にオレンジがかったものが小さく見えた。
「かっ…神楽ァァァァ!!」
それは、私達が探し求めていた神楽ちゃんだった。星海坊主さんが核へと降りると私達も後に続いた。その間に神楽ちゃんは核の中へと呑まれていく。
「オイ、呑まれちまったぜ!どういうこった!?」
「…ヤ…ヤバイ!野郎ォ…神楽を取り込みやがった…このままじゃこいつを仕留める事は出来ねー」
『…こいつを殺してしまえば…神楽ちゃんも…』
「…あァ。死ぬ」
絶望的だった。
【えっえー、ターミナル周辺にとどまっている民間人に告ぐ!】
そんな時、後ろで飛び回っていた軍艦から声が聞こえてきた。
【ただちにターミナルから離れなさい!今からえいりあんに一斉放射をしかける。ただちにターミナルから離れなさい】
「なっ…なんだとォ!?」
なんて事だ。このままでは神楽ちゃんまで。
【とっつァん!待て!!】
すると今度はターミナルの入り口付近でえいりあんに対処していた真選組、近藤さんの声が聞こえてきた。
【ターミナルに残っていた民間人は西口から避難させたが、ガキが一人えいりあんに取り込まれてる!】
そうだ。もっと言ってやれゴリ…近藤さん!
【近藤…ガキ一人の命と江戸を同じ秤にかけるつもりか?人を救うって事はな人を殺める以上の度胸が必要なんでィ。大義を見失えば救える者も救えなくなるぞ。甘ったれてんじゃないよ】
だが、この人には通用しないらしい。確かに、この人の言葉は痛い程わかる。(…だけど)すると、えいりあんが再び暴れだし始めた。
【そーゆう事だからさァ、お前らもウチに帰りなさい!邪魔だから!】
「「『……』」」
どうするんだ、と考えていると星海坊主さんがゆっくりと口を開いた。
「いけ」
「!」
『星海坊主さん…?』
「もうじきここは火の海だ。てめーらを巻き込むわけにはいかねェ」
「てめー、まさか一人で…」
銀ちゃんの言葉に星海坊主さんは立ち上がりゆっくりと前へ歩み出す。
「つくづく情けねー男だよ俺は。最強だなんだと言われたところでよォ、なーんにも護れやしねー」
『……』
「家族一つ…娘一人護れやしねーんだなァ、俺って奴はよォ……これも逃げ続けてきた代償か。すまねェ神楽…せめて最期はお前と一緒に死なせてくれ」