13 長谷川 side
「いや〜恐いわ〜」
「オイオイ、どうなっちまうんだ江戸は?」
江戸中がターミナルでの騒ぎに夢中になり、不安になっていた。だが俺には江戸がどうなろうとどうだってよかった。(…それよりも)
「どうなっちまうんだ俺は…」
また、無職になっちまった…。
えいりあんVSやくざの映画の宣伝で客を集めるはずだったのに、世間は本物のえいりあんに夢中だ。となれば誰も映画に来る事はなく俺はクビになった。ああ、もう全てがどうでもいい。
「いっそ江戸なんて滅んじまえばい…【あっ!なんだアレは!?】……!」
独り言のようにぶつぶつと呟いていると、それを遮るようにテレビの中のアナウンサーの声が耳へと入ってきた。(チャイナ娘の次はなんだ)俺は横目で街中のテレビを見やった。そこには、だんだんとカメラに向かって走って来る見覚えのある姿が映っていた。
【逃げ惑う人々を押しきって何かがこちらへ…!アレは…犬?…老人と…いや】
アナウンサーは言葉を続ける。
【侍と少女!?】
それは、紛れもなく銀さんとなまえちゃんだった。テレビの中では真選組がざわざわと騒ぎ始めていた。
【旦那!?それになまえさんまで…!?】
【お前ら何…!?】
【あ、これカメラ?これカメラ?】
銀さんはすぐにカメラに気付くと顔を向けた。
【えーと、映画「えいりあんVSやくざ」絶賛上映中】
【見に来てネー】
「……」
銀さんとなまえちゃんは映画の宣伝をするとそのままえいりあんへと向かって行った。
…銀さん、なまえちゃん、ありがとう。
でも、もう遅い。