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「二つだけ言っておく。一つ、二度と攘夷志を語らぬ事。二つ、二度と北斗心軒ののれんをくぐらぬこと。この禁犯した時はこの桂小太郎が…必ず天誅を下す」
やはり、男前だ。
「カーツラァァ!!」
と、余韻に浸っている場合ではなさそうだ。私達は急いで駕籠から幾松さんを解放する。
『…桂さん、ヤバイです。逃げて下さい』
「…どうやらそうした方が良さそうだな。幾松殿…色々世話になったな。そして…すまなかった」
「知ってたわよ」
「『!』」
私と桂さんは幾松さんの言葉に驚いた。幾松さんは初めから桂さんが攘夷志士だと知っていて雇ったのだ。
「私もアンタと一緒。目の前で倒れてる人をほっとける程器用じゃないのよ。バカなの」
『…幾松さん』
「だから謝ったりしないでよ」
「…そうか。ではこれだけは言っておこう」
「「ありがとう」」
そうして桂さんは去っていった。真選組も桂さんを追いかけていったのか、その場は静まり返っていた。
『…知ってたんですね』
「色んな所に張り紙があるんだから知らない方がおかしいよ」
『…確かに』
「…アンタ、素敵な知り合いがいたんだね」
『…今度、素敵な知り合いが出来た元凶連れてきてあげますよ』
私と幾松さんはお互い顔を見合わせ、笑った。それから三日後。私は短期で始めたラーメン屋を辞めた。