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『…銀、ちゃん……』
銀ちゃんの背中は段々と遠ざかっていく。神楽ちゃんと新八くんはそんな、と膝をつき脱力してしまった。
嫌だ。銀ちゃんが銀ちゃんでなくなってしまう。あの、死んだ魚の目をした銀ちゃんが、本当に、消えてしまう。
『ッ銀ちゃん!!』
「!なまえちゃん!?」
「なまえ!!」
私は、やっと動いた足を遠くに消えていった銀ちゃんの元へと急がせた。
『銀ちゃん!!!』
「!なまえさん。……!」
私は無我夢中で銀ちゃんを追いかけた。いつも見ていた背中が目に入ると涙が溢れ出た。私は銀ちゃんの名前を叫ぶと振り向いた銀ちゃんに突っ込むように抱き着いた。銀ちゃんは驚いたままどうにも出来ないでいた。私は銀ちゃんの胸に顔を埋めたまま声を荒げた。
『っどうして!どうして勝手に消えようとするの!いっつも自分勝手で…いっつも人に散々迷惑かけて…!!』
「…スミマセン」
「謝らないでよ!…そんなの銀ちゃんじゃない!」
「…さっきも言った通り、なまえさんが知っている銀さんはいないんです」
『…そんな事言わないでよ…』
「…なまえさん」
『…今の銀ちゃんは知らなくても、私は知ってる…確かに生きてたの…!それにまだ、私…銀ちゃんに「なまえさん」!』
私の言葉を遮り、銀ちゃんは私の名前を呼んだ。
「…本当にすみません。けれど、なまえさんが言おうとしている言葉は、今の僕が聞いてはいけない気がします」
『…銀ちゃん』
「…また、ご縁があれば、会いましょう」
銀ちゃんは最後に優しく抱き締め、優しく頭を撫でるとキリッとした顔で優しく笑った。
『…銀ちゃん』
そして、本当に銀ちゃんは行ってしまった。