Rocky and Funny!! | ナノ






「…なァに、それは?」



「なんか夢叶えた人は身体のどっかに毛が生えたホクロがあったゆーてな、高い金出してつけボクロ買うてん。やのになーんも起こらへん。ホンマ騙されたわ」
「『……』」

花子さんの話していく内容に次第に先程の感情は薄れていく。そして決定的だったのは騙されて買ったというつけボクロ。私とお妙さんはニッコリ笑って顔を見合わせた。



「あつ゛ァつ゛ァつ゛ァつ゛ァ!!」



「おのれはバカかァ!!そんなちっさい黒豆で人生左右されてたまるかァ!そんな汚ならしいホクロを携えてダンス踊るつもりだったんかァ!」
『毛をそよがせながら踊るつもりだったんかァ!』
「ぶごォ!ぶごォ!」
「オーカサァァ!這い上がってこい!泥の中から這い上がってこい!」
『大阪っつってんだろォ!』

私達は勢いよく花子さんの頭を鍋に沈ませた。ホントに情けない。鍋から顔を上げると花子さんは苦しそうに息を整える。


「それで…他には、他にはどんな被害にあったの?」

お妙さんは落ち着くと他にも被害があったのかと花子さんに問うと、夢幻教という宗教に入信させられ、今まで貯めていたお金をお布施として持っていかれた事、新聞の勧誘を断れず9紙程とった事、あとはよくわからず消火器20本程買わされた事を話した。話を聞いていた私とお妙さんはどうにも救いようがないバカだ、と半ば驚いていた。



「大阪は人情の街や。勿論、タチの悪いのもおるけど皆どこか他人とは思えん暖かいモン持っとる。けど江戸モンは皆冷たいねん。他人は他人って一線引いとる。ウチ…もう此処でやってく自信ないわ」
「……」

花子さんはそう言うと膝をつき俯いた。するとお妙さんは花子さんの肩に手を置き、口を開いた。

「死ぬ程苦しいなら地元に帰った方がいいんじゃない?踊りなんてどこでだって踊れるんだから」
『お妙さん…』
「でも、まだ江戸に残って夢を追うって言うなら私はいつでも力を貸すわよ」
『私もです。江戸には江戸の人情ってものがあるのを見せますよ。ね、銀ちゃん?』

お妙さんの言葉に私はニッコリと笑って便乗した。そしていつからか帰っていた銀ちゃんへと言葉を投げた。(…アレ?ハーゲンダッツ食ってていーのか?)



「オイオイ。俺ァやらねーよ」
『あれ、乗り気じゃないね』
「宗教だの何だの面倒なのはごめんだ」
「そーですよ。姉上達だけで何とかすればいいんだ」
『アレレ、新八くんまで』

珍しく新八くんも乗り気ではない事に驚いた。何でも夢幻教を知っているらしく、そこの創始者である斗夢という人物はタチが悪いと有名らしい。夢を叶えるという、うたい文句で信者を増やし胡散臭い神通力とやらをちらつかせ人心を惑わし、お布施として信者から金を巻き上げる詐欺師なんだとか。

「花子さんはやめられただけでもマシなんですよ」
「そーそー。わかったらお前は大阪へ帰りなさい。通天閣の周りで踊り狂ってなさい」
「あら、残念ね。夢見る女の子は結構貯め込んでるものなのよ。お金取り返したら報酬も弾んだろーに」
『そーそー。残念』
「ケッ。バカ言っちゃイカンよ。なァ、新八くん?十七、八の小娘がなァ」
「オーカサ、幾ら貯め込んでたか教えてやりな」
『言ったれーい』





「…え?マジでか」






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