13
とりあえずにも事が済み、捕まっていた銀ちゃんも何とか解放され、私達は家へ戻ろうと闘技場を後にした。
「結局一番デカい魚は逃がしちまったよーで。悪い奴程よく眠ると言ったもんで。ついでにテメェも眠ってくれや。人の事散々利用してくれやがってよ」
『まあいいじゃない』
「だから助けに来てあげたじゃないですかィ。ねェ、土方さん?」
『ホント、やっぱり土方さんもバカだったんですね』
「知らん。てめーらなんざ助けに来た覚えはねェ」
『…そんな事言っちゃって』
土方さんが前を向きながら言った言葉に私は小さく笑って茶化す。そんな私に土方さんは気にもせず言葉を続けた。
「だが、もし今回の件で真選組に火の粉がふりかかったらてめェらのせいだ。全員切腹だから」
「「「『え?』」」」
和やかだった雰囲気が土方さんの言葉によって一瞬で凍りつき、私達は声をハモらせた。
「ムリムリ!あんなもん、相当ノリノリの時じゃないと無理だから!!」
『切腹ってアレだよね、美味しいやつだよね』
「なまえさん、とぼけても無駄でさァ。心配いりやせんぜ。なまえさんを切腹にはさせやせん。お前らには介錯してあげまさァ。チャイナ、てめーの時は手元が狂うかもしれねーが」
「コイツ、絶対私の事好きアルヨ。ウゼー」
『ハッ!ゴメンなさい、気を遣わなくて…』
「違うから。空気読んで後退らなくていいから」
「総悟、行くぞ」
「へィ。じゃ〜また」
『はい』
「総悟、言っとくけどてめーもだぞ」
「マジでか」
土方さんと沖田さんはそんな話をしながら帰っていく。心配しなくても何か大丈夫そうだ。そう思った私達は笑った。そして、私達も帰ろう、と立ち上がった。
新八くんと神楽ちゃんが前を歩く中、銀ちゃんは歩き出さずにジッと鬼道丸の面を見つめていた。
『銀ちゃん?』
「…こいつァ、もう必要ねーよな」
『…そうだね』
私がそう答えると面を大きく宙に投げ、タイミングよく銀ちゃんは木刀でそれを討った。すると、面は粉々に砕け、下の川へと落ちていった。それを見届け木刀を腰に収めると、銀ちゃんは空を見上げて笑った。
「アンタにゃもう似合わねーよ。あの世じゃ笑って暮らせや」
『……』
銀ちゃんの言葉に私は微笑んだ。
『子供達にも早く笑える日が来るといいね』
「もーすぐ笑えんだろ。それより、大丈夫なのか」
『え?…私は大丈夫だよ』
天導衆という大きなモノを敵に回してしまったかもしれないが、得たモノは大きい。
『多分、私は私自身を救いたかったのかも』
「?」
『片岡さんを救えなかったから…その時の償いがしたかったのかも。まーそういう問題じゃないけどね』
「……」
あはは、と笑った私に銀ちゃんは本日二度目で頭を撫で回し、歩き出した。私はそれを見てまた笑うと乱暴に撫でられボサボサになった髪を直しながら追いかけた。