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お登勢さんは私を引き取った後実の娘のように育ててくれた。片岡さんと別れてしまうのは悲しかったが、その半面、お母さんが出来たみたいで嬉しかった。
【いただきます】
【食べ終わったらお使い行ってくれないかィ】
【うん!】
そんなある日、一本の電話が入った。
【はい、スナックお登勢です】
まだ14歳の私はお店の手伝いなどは出来なかったが、お登勢さんがいない時は電話番をやっていた。
【…え?】
お店にかかってきた電話は孤児院からだった。片岡さんが倒れた。私はそれを聞くとお登勢さんにひとつ、置き手紙を残し急いで孤児院へと向かった。
荒々しく孤児院の扉を開け、片岡さんの寝ている部屋へと向かった。
【片岡さん!】
【…おや、なまえじゃないか】
【……っ】
久しぶりに見た片岡さんは痩せていた。そんな片岡さんに泣きそうになりながらもぐ、と我慢した。
【…倒れたって聞いたから】
【…それで来てくれたのか。大丈夫、私は元気だよ】
片岡さんはそう言って微笑むと私の頭を優しく撫でた。片岡さんの病は私が孤児院にいた時から発症していた。私はその病がどんなに恐ろしいものかも知っていた。だけど片岡さんは私たちにはそれを決して見せずに優しく笑ってくれていたのを覚えている。