Rocky and Funny!! | ナノ


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私は決して逃げないてる彦くんに覆い被さった。ポチが襲い掛かってくるのが背中に伝わり、ぎゅっと目を瞑った。

「『…?』」

だが、痛みを感じない。ゆっくりと目を開けると、銀ちゃんと桂さんが片腕だけを出し、ポチの角を抑えていた。

「「…俺は男だって?知ってるよ、んなこたァ」」
『…やっぱり、助けてくれると思った』

顔を上げた私はふ、と笑うとてる彦くんを抱えたままポチから離れた。

「オメーもオメーの父ちゃんも男だ。誰も見てくれねーって?バカ言うな。見えてる奴には見えてるよ。んなもん」
「少なくともここに三人いる事だけは覚えておけ」
「お姉ちゃ…」




「フン、生意気言いやがって」




すると、ポチの隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。かと思うと、ポチは勢いよく吹っ飛んだ。

「かっ…母ちゃん!!」

ポチはすぐに体勢を戻し、母ちゃんと呼ばれた西郷さんに向かってきていた。(まーさっきのパンチなら加勢もいらないでしょ)するとまだ土に埋まったままの桂さんが小さく声を漏らした。

「……白フンの西郷…。天人襲来の折、白フン一丁で敵の戦艦に乗り込み白い褌が敵の血で真っ赤に染まるまで暴れ回った伝説の男。鬼神、西郷特盛!…俺達の大先輩にあたる人だ」
『…へぇ』

なんて喋っている間に西郷さんはポチを殴り、気絶させた。西郷さんはそのままの形相でゆっくりとてる彦くんを見た。

「か…か…か…母ちゃん……ご、ごめん…ぼく…」




ゴッ!




「バカヤロー。父ちゃんと呼べェ」

西郷さんはてる彦くんを殴ると気を失ったてる彦くんを担いで私達へと口を開いた。

「テメーらはクビだ。いつまで経っても踊りは覚えねーし、ロクに役に立たねェ。今度私らを化け物なんて言ったら承知しねーからな。それから…」

西郷さんは言葉を続けた。

「なんかあったらいつでも店に遊びに来な。なまえも。たっぷりサービスするわよ」

そう言って西郷さんは帰っていった。

「……恐いよ〜」
『ホント』
「どうやらいらぬ世話をしたらしいな。奴らも侍と変わらんな。立派な求道者だよ」
『…そうですね』

私と桂さんはそんな西郷さんの背中を見て笑った。それから皆を土から掘り出すと銀ちゃんと家路へと向かった。





「…なんであの時逃げなかったんだよ」
『えー?』
「襲われそうになった時だよ」

銀ちゃんの言葉に私は思い出したようにあー、と声を漏らした。それから笑った。

『二人を置いて逃げるなんて出来るわけないでしょー。それじゃダメ?』
「……」

私の言葉に銀ちゃんは黙ったかと思えば、すぐに私の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。

「バカヤロォー」
『えへへ。似合ってたよ、パー子ちゃん』
「るせーよ」






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