Rocky and Funny!! | ナノ






「『せーの』」
「いでででで!ダメだ!もうほっといてくれ!俺もうここで暮らすわ!!」

私と桂さんは一気に銀ちゃんの腕を引っ張ってみたが全く動かず、銀ちゃんはもう既に諦めていた。と、その時私と桂さんの後ろから物音が聞こえた。

「「『!!』」」

振り向くと近くの茂みがガサゴソと動いている。噂の化け物だろうか。

「てる彦くん?」
「てる彦くんだよな…てる彦くんだと言ってくれ」
『てってる彦く〜ん』

私達は徐々に近付く音に唾を呑み込んだ。ふと、桂さんが私の手首を掴んだ。そして一気に動いた。




ガッ!

桂さんは私を連れて逃げようとした。だが、それを制するように銀ちゃんに足首を捕まれてしまった。

「てめェ、普通この状態の俺置いてくか?」
「貴様ここに住むと言っていたではないか。心配するな、スグ戻ってくる。カステラ買ってくる。カステラだから」
「カステラなんか何に使うつもりだよ!っつーかそれなら一人で行きやがれ!」
『私と桂さんの愛の逃避行を邪魔しないで!』
「尚更行かせるかァァ!!」



「…何をやっとるんだ、おぬし達」

私達がぎゃあぎゃあと騒いでいると天人らしき二人がこちらを見ていた。(…ん?どっかで見たことあるような…あ)





「ほうほう。では、その子供がここに入ったきり戻ってこんと。おぬしらはそれを捜しに来たわけじゃな」

どっかで見た事あると思えばテレビで動物好きだと言われているハタ皇子だ。とりあえず皆で銀ちゃんを穴から抜け出させてから、事情を話した。

『なんかここで度胸試しとかしてるらしいんです』
「あそこの離れに木が見えるじゃろう。その木の実を持ち帰れば立派な侍の証だとか…。まァ子供らしいといえば子供らしいが」
「ではここは貴様の物なのか?ちっちゃいオッさん」
『ちょ、桂さん』
「誰に向かって口聞いとんじゃワレェ!このちっちゃいオッさんがどなたと心得るワレェ!」
『アナタもちっちゃいオッさん言ってますよ』
「よさんか、じい。星は違えども美人は手厚く遇せと父上がおっしゃっていたのを忘れたか?」
「皇子、騙されてはなりませんぞ。何やかんやでお父上はブサイクと結婚しておられるではありませんか」
「オイ!それ母上の事か!?母上の事かァァ!」
『あっだからブサイクが生まれたんですね』
「オイ!それ余の事か!?余の事かァァ!」

全く!と怒りが収まらないハタ皇子がふと、銀ちゃんを見るとん?と声を上げた。そう言えば先程から一言も喋らない銀ちゃんに私は疑問を抱いていた。

「おぬし、どこぞで会ったかの?」
『え?そーなの?銀ちゃ…』


「いやだ〜、キモ〜い。縄文式のナンパ?そんなんじゃ江戸っ娘はひっかからないぞハゲ。死ねば?」


『……(会ったんだな。何かあったんだな)』
「そうか…どこぞで会った気がするのじゃが。まァ、美人が困っておるのに放っておく訳にもいくまい。この方らの人探し手伝ってしんぜよう。のう、じい?」

どうやら、てる彦くん捜しを手伝ってくれるらしい。そうとなれば、と桂さんが先程の子供が言っていた化け物の話を持ち出した。



ギャオオオオス!!



その時、聞いた事のないような不気味な鳴き声が屋敷内に響き渡った。






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