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「…と、いう事だ」
『よかった〜!桂さんが普通の人で!』
「心配するな。俺はなまえ殿含み女性が恋愛対象だ」
『えっ!?』
「どさくさに紛れて口説いてんじゃねェェ!」
何でも桂さんも銀ちゃん同様、西郷さんを化け物呼ばわりしたらしく、拉致されてきたらしい。話を聞いた私はホッと胸を撫で下ろした。(しかも恋愛対象だなんて!もー冗談でもドキドキしちゃうネ!)
「まあそれ以来、何とか抜け出す機会をうかがっているんだが。オイ、そこもっと腰を振れェェ!」
「ヅラ。長くここの空気を吸いすぎたな。お前はシャバに戻るのはもう無理だ」
『桂さん…』
「ふざけるな。俺には国を救うという大仕事があるんだ。こんな所でこんな事をしてる暇はない」
「こんな所でノリノリで踊ってる奴に国も救われたくねーだろうよ」
『桂さん…いや、桂さんならこの世界でも通用すると思います綺麗だし』
「お前切り替えはえーな」
「ちょっとォ〜ヅラ子もパー子もノリ悪いわよォ」
なんて喋っていると突然音楽が鳴り止んだ。
『そうだよォ〜もっとちゃんとやってよ!』
「つーか何でなまえも踊ってんだよ」
『いやなんか面白そうだったから』
「そんなんじゃお客様気分悪くしちゃうでしょ」
「何言ってんのよアゴ美。この気だるさが売りなの」
「誰がアゴ美だコルァ!!」
「パー子、紹介しただろう。この人はアゴ代だ」
『違いますよ。アゴ江さんですよ』
「あずみだボケェェ!」
「オイ!何やってんだよ!グダグダじゃねーかよ!」
「「『!』」」
すると突然、客席にいたバーコード頭のオッさんがヤジを飛ばし始めた。
「こっちはオメー、てめーらみてーなゲテモノわざわざ笑いに来てやってんだからよォ!もっとバカな事やってみろよ化け物どもよォ!」
「何だと、このすだれジジイ。てめェその残り少ねェ希望を全て引き抜いてやろーか!?」
「止せ、パー子」
『そうだよ落ち着いて』
確かに銀ちゃんの言っている事には十分賛同出来る。残り少ない希望など全て燃やしてやりたい。だが、ここで暴れてしまえば店に迷惑がかかってしまう。ここは我慢だ、と抑えているとオッさんの後ろに西郷さんが立ちはだかった。(まさか…)そして西郷さんはオッさんの頭をガッと掴んだ。
「お客様。舞台上の踊り子に触れたり汚いヤジを飛ばすのは禁止と言いましたよね?オカマなめんじゃねェェ!」
ガシャアン!!
そして思いきりオッさんを投げ飛ばした。
「「『……』」」
私達はそれを見て無言で顔を見合わせた。