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「あー坂本さんじゃ!!」
「坂本さんが生きちょったぞォ!」
銀ちゃんは土の中へと飛び込んだ。暫くの時間が経つ間、私はそれをじっと見守る事しか出来ずどこか不安に駆られ始める。そんな時、勢いよく土から銀ちゃんが顔を出すと、坂本さんを連れて這い出て来た。私はそれを確認するとホッと、胸を撫で下ろす。それを横で見ていた陸奥さんが「無茶な事を…」と呟く。
「自分も飲まれかねんところじゃったぞ。何を考えとるんじゃあの男…」
「…ホントっスね。何考えてんでしょ、あの人達」
『なーんにも考えてないんじゃない?』
「あはは、確かに。…でも」
『…うん。なんか銀ちゃんたちしか見えないもんがあるんだろうね』
九死に一生だったというのに笑っている坂本さんとそれを呆れたように見る銀ちゃん。きっと二人にしか見えない何かがある。そう思いながら私たちは銀ちゃんたちを眺めていた。
『大丈夫?』
「なまえ」
少しして私は銀ちゃんの元へと向かい鞄に入れていたタオルを被せた。
『ホント、無茶するんだから』
呆れた顔で銀ちゃんの目線に合うようにしゃがむと銀ちゃんは「オメーだってやろうとしただろ」と笑う。
『…死んでたらホントに星になれたんじゃない?』
「…なまえを置いて死にゃしねーよ」
『アラ、嬉しい事言うね』
「……(本気にしてねーなコイツ)」
銀ちゃんは私を見ていたが、突然ため息を吐いた。なんだ、と思っていると銀ちゃんは立ち上がり、帰るぞ、と私の頭を軽く叩き坂本さんの船へと向かった。