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何とか家から脱出すると外で火消したちに入ることを止められていた辰巳さんがいて、頭が無事なのを見ると涙ぐんだ顔で抱き着いた。そんな光景を私はみて微笑む。
「満足か?」
『うん、ありがとう銀ちゃん』
「あん?何もしてねーよ」
『わざわざ助けに行ったのは辰巳さんたちのためと、私のためでしょ?』
「…さあな」
死んだ目で頭を掻いた銀ちゃんに私はまた微笑んだ。(素直じゃないなァ)
次の日、部屋からお店に向かうと既にキャサリンとお登勢さんが新聞を読みながら朝食を食べていた。
『おはよー』
「オハヨウゴザイマスなまえサン」
「おや、起きたかィ。朝ご飯出来てるよ」
『ありがとー』
キッチンに立ち、お茶を入れながらふと、新聞に目をやるとそこには昨日の出来事、辰巳さんが大きく載っていた。私はそれを見るとふ、と笑った。
『お登勢さん、それ次貸して』
「ん?何だィ、アンタが新聞読むなんて珍しいじゃないか。どういう風の吹きまわしだィ?」
『新聞読んで世間を勉強だよ』
「私ガ声ニ出シテ読ンデアゲマショウカ?」
『馬鹿にしてない!?ねェ馬鹿にしてない!?』