空即是色 | ナノ

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「キルア、なまえ」
「ん?」
『なーにー?ゴン』

ウイングさんの部屋を後にし、天空闘技場へと戻る途中にゴンが口を開いた。

「あいつら…キルアとなまえも脅迫したんだね…。腹立つなー」
「ああ…でもまあ、一番気がかりだった師匠の許しは得たし」
「ズシも無事に戻ってきたしね」
『二人ともズシの事心配して優しいねー』
「え?何言ってんの」
「なまえも無事で安心してたじゃねーか」
『え?そうだったっけ?』

ふと、私は先程の事を思い出す。私が他人の心配など、今までにした事があっただろうか。(…二人といて、私変わってきてるのかなー)

「でも、わざと負けるのは…まあ我慢出来るけど、あいつらがまた同じような事をズシにしてきたらと思うとさ…」
「大丈夫」

ゴンがそう言うと、キルアが静かに笑った。

「心配いらない」
『(まーた何かやる気だなー)』




「今日キルアちゃんとなまえちゃんに勝って6勝。次にゴンちゃんとやって7勝…そしてあと3回、同じようなカモを見つけて勝てば……くくく、フロアマスターか…それでオレも一生の富と名声を約束される事に…」




ぞくっ!




5月29日。
キルアとサダソの試合開始10分前。

控え室ではサダソが不気味に笑い、独り言を呟いていた。…その瞬間、頭を切り裂かれるような、恐ろしい感覚を味わい、体が動かなくなってしまた。目の前の鏡を見ると、背後には頭にナイフを突き付けこの世のものとは思えない、そんな表情をしたキルアが立っていた。

「動くと殺す…念を使うと殺す…声を出しても殺す…わかったらゆっくり目を閉じろ…」

キルアの言葉にサダソは目を閉じる。

「約束を破ったらどうなるかわかったか?」
『ねーもう殺しちゃえば?』

キルアが言葉を続ける前にずっと様子を見ていた私が口を開いた。そして、ゆっくりとサダソへと近付き顔を覗き込んだ。

『約束を守れないような奴は生きる価値もない…そんな奴、殺しちゃえばいい』

サダソが目を閉じながらも怯えた表情をしている。そんなサダソを、獲物を目の前に私は殺人鬼の己を思い出したかのように興奮を抑えきれずにいた。






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