18
「ホッヨッ」
ゴンがケガをして1ヶ月。
私とキルアがゴンの部屋を訪れると、ゴンは包帯を取り身軽に逆立ちをしていた。
「……」
『ゴン!』
「あ、キルア、なまえ。今そっちに行こうかと思ってたとこなんだ」
「おま…ケガはもういいのか?」
「うん、ほら」
そう言ってゴンは跳び跳ねたり足と腕を速く動かし「もうバッチリ!」と嬉しそうに笑った。そんなゴンにキルアは目を丸くさせ驚いていた。当たり前だ。全治4ヶ月と言われたケガをたった1ヶ月で完治させたのだから。
「ったく。どーゆー体してんだよ、お前変」
「キルアに言われたくないね」
『あはは、確かに』
「なまえもね」
『え?』
「ーで、キルア達、何か用があったんじゃないの?」
「おう。これこれ」
ゴンに話を切り出され、キルアはポケットに手を探り入れ紙を取りだし、ゴンへと見せた。
「これなんだ?」
「チケット?」
ゴンの言葉に私とキルアはニッと笑い、キルアは「ただのじゃないぜ」と言葉を続けた。
「ヒソカが戦うヤツだ」
「!」
キルアの言葉にゴンは一気に緊張を張り巡らせた。数日前、私とキルアはゴンの為にヒソカが戦うチケットを買っていた。
「ヒソカ戦大人気だぜ」
『気に入らないけどね』
「すげー行列が出来ててダフ屋までいたくらいだ」
『気に入らないけどね』
「「(なまえ…そーとー嫌いなんだ)」」
「あーえっと…そいつらから色々聞いてきたんだけどさ、やっぱあいつただ者じゃないぜ。11戦して8勝3敗6KO。KO数イコール死人の数なんだってよ」
キルアの話にゴンは冷や汗をかいていた。
「3敗は全部不戦敗。戦闘準備期間がなくなったら登録だけして試合には来ないって事らしいな」
『つまりヒソカは実際に戦えば負けなしって事。気に入らないけどね』
「なまえ…」
私の私情にゴンは苦笑を浮かべた。そんなゴンに更にキルアは話を続けた。
「11戦して相手にとられたポイントは僅か4P。ダウン一回、クリーンヒット3回のみ。実力はもう間違いなくマスタークラスだってよ」
「うわー、まいったなー」
「『……』」
ゴンはそう言いながらも早く戦いたい、と言った表情でうずうずとしており、私とキルアは顔を見合わせて少し笑った。
「―で、対戦相手はカストロってんだけど、唯一ヒソカからダウンを奪ってる男だ」
「!」
「ヒソカが敵に与えた4Pのうち3Pがこのカストロによってだとよ。因縁の対決ってやつだな。どうやらお互い申し合わせて戦闘日を指定したらしい。これで多少はヒソカの戦い方が分析出来るぜ。本気のヒソカが見れるかもよ」
『気に入らないけど、ね!』
「なまえ…落ち着けって…」
私のヒソカへの嫌悪感にキルアがなだめる中、ゴンはうーん、と唸った。
「でもいいのかな。ウイングさんとの約束が」
「ああ!?大丈夫に決まってるだろ!ただ試合を見るだけなんだからさ!」
『(…嫌な予感)』