いつものように彼の隣で目を覚ませば、ふいに感じた寒気に意識が覚醒した。
殺気。
そう言わざるを得ない彼の視線に思わず喉が締まる感覚に襲われたが、すぐさま言葉を発した。
「、どうしたの。文次郎」
暫くじっと見つめる彼にそう言えば、彼はハッとした様に一瞬目を見開いた。
「!…あ、いや…」
彼は私から目を離しバツの悪そうな声で言葉を止めたが、またすぐに口を開く。
「…たまに、お前の事を何故だか無性に殺したくなる…というか、」
「…え?やだ、何言ってるの…?」
「…なんか、心の奥で憎悪みたいなのが湧き出てくる様な感じがするんだよ」
「……」
「あ、あー、多分あれだ。可愛さあまって何とやらって奴だろ」
黙りこくったままに彼の話を聞いていれば、彼は再び己の言葉にハッとしたのかすぐさま弁解するかの様に笑った。そんな彼に私はふっと笑うと、優しく頭を撫でた。
「でも…、大好きな文次郎になら、殺されても私は構わないよ」
「!バカタレ!…好きな女を本気で殺せる訳ねえだろ」
私の言葉に勢いよく返した文次郎は恥ずかしそうに顔を顰めながらも私を強く抱き締める。
そんな温もりが今日も愛しくて堪らない。
となり
(私も、五百年越しに漸く手に入れたあなたの隣を、そんなすぐに手離す訳ないよ)
(また、誰かを、殺したとしても)