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"世界が終わる夜には何がしたい?"


「バカタレ」

あたしがそう口を開けば文次郎は一言そう放った。

「ふざけた事を抜かす前にちっとは勉強に励め。お前今のままで卒業出来ると思ってるのか?」
「…今それ関係無いじゃん。文次郎ってば面白く無いなあ」
「面白くなくて結構」
「ふーんだ」


例えばの話じゃない。ほんの軽い気持ちで聞いただけなのに、文次郎は相も変わらずの仏頂面で帳簿を睨みつけながら面白くも無い返答を繰り出した。暇を持て余して会計室にやってきていた私は拗ねた様に唇を尖らせて文次郎の弾く算盤へと視線を落とす。(常識的に考えて文次郎の言葉通り勉強に励む事無く邪魔しにきている私が悪い事はわかってるんですけども)


「…いつも通り鍛錬をする」


「え?」

すると、ふいに静まり返った部屋で文次郎がボソッと呟いた言葉に思わず私は聞き返す。

「だから、世界が終わる夜に俺はいつも通り鍛錬をすると言ったんだバカタレ」
「…世界が終わるのに鍛錬する文次郎の方がバカじゃない」
「ふん。そもそも世界がいつ終わるかなんて誰にも分かる訳ねえだろう。だから俺は終わらないと信じて鍛錬に励むだけだ」
「…どっちにしろ面白くない回答だね」
「うるさいわ。お前にも付き合ってもらうぞ」
「えー!なんで私まで!」
「こんな所でだらだらしてる罰だ。拒否権は無いと思え」
「…文次郎の鬼」
「はっ、好きなだけ言ってろ」


"死ぬまで、付き合ってもらうからな"


そう付け足した文次郎に、私はその言葉の真意を理解出来ずにいた。



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