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今日は一年に一度の愛を渡す日。世間一般に騒がれるバレンタイン。朝から何故かあたしがそわそわしていた。(今日こそ実行しなければ、絶対に、間に合わない)

「おーい、メシ出来たぞー」


あたしの彼、サンジはコックさん。コックさんだから、勿論キッチンは彼の領域。サンジがキッチンから離れることがあるのはあたしといるとき。だから、サンジに内緒でチョコを作るなんて不可能に値する。バレンタインまでの毎晩は何度もキッチンに入り込み、試みたがルフィが間食しに来たり、サンジが仕込みしていたりと、今日まで失敗に終わっていた。(前の島でバレずに買い出し出来たところまでは完璧だったのに…!)



あたしが考えていることはもうひとつあった。(…サンジが、いつもどおりなところ)

サンジのことだから朝から嬉しそうにチョコを催促するかと思ったのに。(何にも言ってこないどころか、そわそわする素振りもなく、いつもどおり)もしかしてそんなに期待していなかったんじゃ、と思えば少し悲しくなった。もしかしたら好きじゃなくなったんじゃ…と悪い予感が過ぎったときたらあたしはもう今日がラストチャンスだと思い、必死に夜を待った。



「…よし、」

皆が寝静まった頃、あたしはこっそりと部屋を抜け出し、キッチンへとやってきた。明かりをつけて部屋に隠しておいた材料を取り出し、調理にとりかかる。トントン、と規則正しく包丁がチョコを切っていく音と同時にあたしは、もしサンジがチョコを渡した時、嬉しそうな顔をしなかったら、と考えるとじわじわと涙が零れてきた。(だめだだめだ…大丈夫、きっと、喜んでくれる)



「できた!」
「美味く出来たかい?」
「っ!さ、サンジ…!?」

完成したと安堵の言葉を漏らした瞬間にサンジが後ろからあたしの名前を呼んだ。(い、いたからいたんだこいつは…!)あたしは泣き止んだ赤い目をごし、と擦った。

「最近夜中にキッチンにいたのは、これ?」

サンジはあたしの背中越しから完成したチョコを指さした。よく見れば少し頬の赤いサンジにあたしはこの時ようやくわかった。(そっか…やっぱり欲しかったよね。あたしが切り出さなきゃ駄目だったんだよね)ぎゅ、とチョコを握りしめる力を強くしてサンジに向き合った。



あたしの
受け取ってください



(……)
(サンジ…?どうしたの?)
(やばい。凄い嬉しすぎ)




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