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「…うう……頭がいたい」

目覚めは最悪だった。
朝、目が覚めると同時に襲ってくる頭痛が一日の始まりを告げるなんて。(…薬、どこだっけ)頭痛を治めるべく、薬を探そうとベッドから起き上がろうとした時だった。


「…ん?」


起き上がる際にベッドに手をつくと、何かに触れた。(…なに)相変わらず痛みに襲われる頭を私はゆっくり動かしその正体へと視線を向けた。

「……!!」

その時、割れそうな程に感じいた頭痛は一瞬にして吹き飛び、私はベッドから勢いよく飛び出た。否、飛び落ちた。

「…うるさい」

ベッドの下に落ちた私は、普段からあまり片付けをしていない故に、床に散乱としている本や何かの部品などに体をぶつけ、ガシャーン!と盛大な音を立てた。
それを耳にしたベッドにいた正体、否その人はまだ意識が朦朧とする中、ゆっくりと体を起こした。

「な、な、何で鬼灯様が私の、ベッドに…!」
「……」

鬼灯様は朦朧とする意識を起こしているのか、暫く無言で私を見つめていた。

「…昨日、お酒を呑んだ事は覚えてますか」
「え、あ…そう言えば、呑んだような」

そして、ゆっくりと開かれた言葉に私は昨日の出来事を思い出そうと、頭を回転させ始めた。(う…脳を動かしたら忘れてた痛みがまた…)
確か、昨日は閻魔殿に十王らを集い、壮大な飲み会が開かれた。その中で、私はあまりお酒が飲めない為、皆へお酒を注ぎに周り巡り大忙しだった。

「あらなまえちゃん、注いでばっかりいないで貴方も呑んだら?」
「あ、いえ私は…」
「そうそう。今日は一応無礼講だし、呑んで暴れても大丈夫大丈夫」

そんな中、一人バタバタとする私に声をかけてくれた樒さんと篁さんが私にお酒を勧めた。(…まあ、確かに一杯くらいは無礼講でも呑んどかないと逆にアレだよね)なんて思案すると、じゃあ、と空のグラスにお酒を注いでもらった。


「そこから、覚えてないです」

そこまでの事を話せば、鬼灯様は分かりやすい様に大きくため息をついた。

「私や他の方々がどれだけ被害を被ったかも覚えてないんですね」
「す、すみません…。ちなみに、どんな…」
「十王片っ端から擽り、閻魔大王には日頃の恨みからか西瓜を一口で食べさせようと無理矢理に押し込め…ああ、まあそれに関しては私には良い光景を見せもらいました」
「ひ、ひい…」
「その後は各々に管巻いてそこら中歩き回ってましたよ。そして私がここまで連れて来たんです」
「ご、ごめんなさい…」

言葉だけでは想像もつかぬ程に、最悪な事態が繰り広げられていたのだろう、と考えると私はベッドの上にいる鬼灯様に土下座する。


「…まあ、その代わり良い事もありましたから、今回は不問に付しましょう」

「…良い事?」
「ええ、なまえさんが、大胆だという事が今回で分かりました」
「!?ど、どういう事ですか」
「さあ、何でしょうね」

鬼灯様はそう言い放つと、少し乱れた己の衣服を直し、ベッドから降りて部屋の扉に手をかけた。

「今後、私以外の前でお酒は飲まないで下さい。後が知りませんからね」

そして振り返りざまに一言告げると、部屋を後にした。

「…な、な、」

そんな鬼灯様をよそに、部屋に残された私は上手く言葉を発せずに、未だに襲う頭痛に苛まれていた。



(し、樒さん!先日はすみませんでした!)
(え?あー、なまえちゃんがお酒呑んですぐ寝ちゃった時?大丈夫よ、誰も気にしてないわ)
(…へ?)
(貴方ずっと鬼灯様の服の袖掴んで離さず寝てたんだから。可愛かったわよー)
(…!!)

してやられたり。



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