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「だーからあんこは白あんやて!」
「何言うてんねん!黒あんのが美味いに決まっとるやろ!」

こんな微笑ましい光景はもう何度目にした事だろうか。いつもニコニコそれを何度笑って見守っていた事だろうか。

「なあなまえ、あたしと一緒であんこは白あんやんな?」
「どあほ。黒あんやろ。なあ?」

幼馴染である和葉と平次が一斉に私を見遣り、言葉を投げかけた。ああ、出来れば話しかけてほしくない。

「そうやね、私はどっちも好きやから…」
「何や、煮え切らんやっちゃの」
「平次!別にどっちも好きな子がおったってええやないの!」
「せや言うてもお前が白あんと黒あんのどっちが美味いか決めよう言うたんやろ!」
「平次が白あんなんかクソ不味い言うからやろ!」


ああ、何ともどうでもいい。登下校にて繰り返される二人の言い合いにはもう飽きている。まるで、二人の仲の良さをこれ程までに見せつけられているかの様だ。

どうして、三人が幼馴染だったんだろう。
これまでに幾度となく思い浮かんだ言葉は残酷なものだった。私と和葉だけだったら。全てに然り、誰か一人がもし欠けていたのなら、私はこんなにも無情な気持ちを抱かなかったのかもしれない。


「なまえ?どないしたん?」
「何や、えらい暗い顔しとるやないか?」
「…ううん何にもないよ!明日のテストちゃんと解けるかなーって!」
「……」
「うわ……嫌な事思い出させんなや」
「あはは、ごめんごめん。でもちょっと不安やし先帰ってテスト勉強するわ!また明日」
「おう、気ぃつけて帰りやー」


「…何で、うちに何も言うてくれんのやろ」
「ん?何か言うたか和葉」
「…ほーんま、平次鈍すぎて困るわ」
「は?」



逃げ出した。
こんなにも今の自分に相応しい言葉は無いだろう。三人が幼馴染でなければ。なんてあり得ない事を考えているのだろうか。一人でも欠けるなんて事、考えてしまっていた自分がこれ程までに憎く思う。
白あんだって、黒あんだって二人が好きだから、選ぶ事なんて出来ない。それ程までに、二人が大好きなのに。平次に、恋心なんて抱かなければ今もきっと何も感じる事なく笑っていたのに。
和葉もきっと、気付いている。和葉は随分前から私に平次が好きだと言う事を打ち明けてくれていた。けれど、私は打ち明ける事が出来なかった。だから、和葉も私が言うまで何も言わずに、待っているのだろう。(ごめんな、和葉。やけど言える訳ないよ)

逃げ出した先に見えたコンビニに特に何も買う予定はなかったが、思わず足を踏み入れた。商品が並ぶ陳列棚を何の気なしに見ていると、ふっと視界に映り込んだ白あんと黒あん。

どっちも好きだ。

…けれど。
ふいに笑いが溢れた私は、白あんを手に取りレジに向かった。(私は、これからも平次と和葉の幼馴染でいたい)(ほら、二人揃えば平和、だし)(…なんてね)





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