sss | ナノ

毎朝、エドワードさんの三つ編みを結い続けて3週間が経っていた。エドワードさんとアルフォンスさんが宿泊してきた次の日からひょんな事にエドワードさんの三つ編みを結う事が既に私の日課になっていた。それが苦になる事は一切無く、結う間にも二人とは話が弾み、今までに私が体験した事のないような旅の話を聞かせてくれる事が寧ろ楽しみになっていた。

ある雨の朝、エドワードさんへと同じブロンドの髪をした可愛らしい顔立ちの少女が訪れた。なんでも、二人の幼馴染で機械鎧整備士なんだとか。リゼンブールという少し離れた村からエドワードさんの壊れた機械鎧を治す為に訪れたらしい。機械鎧の事は無に近い程に知識はない私だが、何だか少し興味が湧き私はエドワードさんの部屋でそれを治す様を眺めていた。

「ったく、どうしたら機械鎧がこんな風に壊れる訳?」
「兄さんてば乱暴だから」
「あん時暴れたのはアルだろ」
「ほら、神経繋ぐから少し黙って」

流石は幼馴染といったところだろうか、二人の言い合いを軽く流した少女もといウィンリィさんはエドワードの機械鎧と接合部分である神経を慎重に繋いだ。その痛みは一体どんなものなのか、きっと私には一生味わう事のないであろう痛みをエドワードさんは顔を歪ませて耐えていた。暫くして楽になったのか助かった、と笑ったエドワードさんに私も何故だか頬が緩む。それと同時にウィンリィさんがとても信頼されておりとても親密な関係なのだと少し胸が苦しくなった。


「じゃあ、帰るけどくれぐれも大切に扱ってよね」
「おう、サンキューな」
「あ、僕送っていくよ。ついでに色々買い物もしたいし」
「頼んだぜ、アル」

暫くしてウィンリィさんが帰り、アルフォンスさんが見送りにと出て行った後、部屋には私とエドワードさんが残っていた。

「では、私も」
「何でだよ、まだ三つ編みしてないんだけど」
「え?」

機械鎧が治ったともあれば、私の役目はないと部屋を出ようとすると、エドワードさんがそう発した。そんなエドワードさんの言葉に私は少し高い声を出してしまった。


「雨、止みませんね」
「ああ。雨の日はどことなく機械鎧を繋いでる部分が痛くってよ。たまんねーんだよ」
「…ウィンリィさんて、凄いですね。そんな難しそうな機械鎧を扱えるなんて」
「あいつはメカオタクだからな」

どうして機械鎧が使えるのに私が三つ編みを結うのか。細かい事は聞く事なく、私はこの3週間と同じようにエドワードさんの長いブロンドに櫛を通し繊細に扱うように三つ編みを結いながら話をしていた。

「…ウィンリィさんとお話してる時のお二人はとっても楽しそうですね」
「ん?そうか?」
「っそういえば、もう少しでエドワードさん達はこの街出て行ってしまうんですよね」

ウィンリィさんと話をしていた時のエドワードさんの笑顔がふと脳裏によぎり、羨ましいというように思わずぽつりと零してしまう。そんな私にエドワードさんが返した瞬間に、ハッと我に返り話題を変えると、突然エドワードさんの頭が後ろへと倒れてきた。後頭部から一転して顔を現したエドワードさんの大きな瞳が私を捉えるとその近い距離に私は急激に顔を熱くさせた。

「え、エドワードさん…?」
「あのさ、その…えーと」

一体何が起こっているんだ、と困惑しながらも平然を装う私にエドワードさんは少し照れ臭そうに頬をかきながら口を開いた。

「良かったらなまえも一緒に…行かないか?」

思わぬ言葉に私は髪に触れていた手を離しそうになる。するりとしなる髪が滑り落ちそうになった瞬間、我に返ると私の顔は一目瞭然な程に真っ赤になっただろう。

「えっ…え?」

いや、私の勘違いかもしれない。エドワードさんがどんな気持ちで言葉を発したのかわからない。ただの三つ編み要因として声をかけただけなのかもしれない。暴れ回る心臓の音を落ち着かせようとすると同時に私はいつの間にかエドワードに恋い焦がれていたのだと確信する。出来れば、たった今発した言葉は私の勘違いで終わらせたくない。そんな期待を込めながらエドワードさんの次の言葉を待ちわびた。



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -