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見張り台から遠く見えるは故郷の小島。
ああ。帰ってきたのか。
喜びと共に生まれる悲しみはとても複雑だ。


「あれがなまえの生まれた島か?」
「…うん、そう」

見張り台で毛布にうずくまる私の隣で好奇心を抱くルフィに私は白い息を吐くと共に頷いた。


私は、とある島でルフィ達と出会い、生まれた故郷の島まで共に航海をしてきた。
だから、故郷である島で私は船を降りる。
今日で、この夜で、ルフィとお別れなんだ。

「良かったな!故郷に戻ってこれてよ」
「…うん」
「何だ?嬉しくねーのか?」
「…嬉しいよ」
「けどおめー全然嬉しそうじゃねーぞ」
「……だって、もうルフィとお別れなんだよ」

航海を共にした中でルフィと結ばれ、共に笑い合ってきた思い出があふれ出すように脳裏を満たす。そんな私の瞳には涙が溢れそうな程溜まっていた。

「ルフィはお別れするの悲しくないの?」
掠れるような声でそう言うと頭に暖かいものが乗りかかる。それがルフィの手だとわかるには時間はかからなかった。

「悲しいよ。すげー悲しい」
「だったら、」
「けどよ、なまえはずっと帰りたかったんだろ?それに、なまえがこのまま船にいたら俺がすげー心配になるんだ」
「……」
「俺が守るってのは当たり前なんだけどよ、どんなに大切なものでも守れない事が俺の力じゃまだまだあるんだ」

それはきっとエースの事だろうと、私はすぐさま理解した。私の頭に乗りかかった手は次第に下へと滑り落ち今度は私の頬を優しく包んだ。

「二度と会えなくなる訳じゃないんだ。絶対にまた、海賊王になって会いに来る」
「…絶対?」
「ああ!」

ルフィは決めた事は絶対に覆さない。海賊王になるまできっとまだ道のりは果てしなく長い。だが私がこのまま船に残るなんて絶対に出来る訳がない事はわかりきっていた。だから、私はにっこりと微笑んだ。

「ずっと待ってるからね」



終着駅はまだ遠い
(せめて最後の夜、ルフィの傍に)



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