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なまえとは付き合って2年になる。同い年で青子とも仲が良く、けれどどこか抜けていて放っておけないタイプのふわふわした女の子。
「快斗くん帰ろうっ」
「…上履きのまま帰るなよ」
「あ」
こんな会話を日常茶飯事繰り返し高校生活2年を過ごしてきた。お互い気を遣う事もなく、隠し事も…一つだけ。

「ねー、明日だよね?怪盗キッドがこの大通りで鈴木財閥の会長さんと決闘するの!」
「!あー…そうだったっけか?」
「そうだよ。ね、明日も見に行かない?」
「…おめー本当にキッドが好きだな」
「だってあの丁寧な言葉遣いと華麗な怪盗っぷり!素敵だと思わない?」
「はは…」
「けどキッドって普段何してる人なんだろうね?」
「…さーなー」
そう、2年も付き合ってる彼女と言えども怪盗キッドの正体が彼氏の俺だと言う事は明かしてない。勿論、今後も明かすつもりもない。今までだって仕事の時は上手くすり抜けてきたつもりだからバレる心配もないだろう。



「楽しみー!キッドが現れるまであと10分だよ」
「だな。(大分混んできたな…)」
翌日、俺となまえは怪盗キッドが現れる大通りへとやってきていた。わくわくと胸を高鳴らせるなまえを横目にきょろきょろと辺りを見回し見物客が増えてきたのを確認すると口の端を吊り上げた。
「俺、そこの自販機でジュース買ってくるよ」
「えっ混んでるからはぐれちゃうよっ」
「大丈夫だって。すぐ戻っから!」

なーんてな。
わざと離れた場所へと走った俺はなまえに少々の罪悪感を抱きながらも仕事の準備を始めた。暫くすれば俺の事を探し始めて怪盗キッドどころではなくなるだろう。隠し事なんて本当はしたくねーけどこれだけは絶対に教えられない。


(ladies and gentlemen!!)


けれども、なまえは俺を探す事なく優しくキッドを見守っていたのを俺は知らない。



名探偵にて快斗くん



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