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「ふあぁ…おはよーサンジ」
「…ったく」

朝早く料理の仕込みをしていると大きな欠伸をしながらパジャマ姿でキッチンに現れたのは小さい頃からバラティエで共に料理を学び、この麦わら海賊の一味となったなまえ。レディには優しく紳士をモットーにしている俺だがこんな大きな欠伸をしてパジャマ姿の寝癖頭のなまえをレディだと誰が言う。それに加えてこの船に乗ってから料理など一度もしていない。幼馴染みとして情けない。俺はそんななまえに深いため息をついた。

「いつもそんな格好で出てくるんじゃねぇ」
「別にいーでしょ。誰もいないしさ」
「(俺は存在してねーってか?)そんなんじゃクソマリモに振り向いてもらえねーぞ」

「…は?」

俺の言葉になまえは固まっていた。やはり図星か。少し前から気にはなっていたがここ最近あのクソマリモとやたらと一緒にいてるのが目に映っていた。

「あいつとやたらと楽しそうにしてたじゃねーか。好きなんだろ」
「…なんで」
「けど、そんなレディのかけらもねぇ格好じゃ一生振り向いてもらえねーぞ」
「……」
「…?おい、聞いてんのか?」

俺の言葉になまえは俯き黙り込んでいた。好きな奴がバレて恥ずかしいのかショックなのか。そんななまえの姿は見たことがなく少し焦ってしまう。恐る恐る顔を覗き込もうとした瞬間。

「あははは!やっぱりサンジにはバレてた!?やだなー恥ずかしい!」
「…び、びっくりすんだろ」
「確かにこのままじゃダメだよねー…うんわかった!私頑張るね」
「え?あっおい…」

するとなまえは勢いよく顔を上げ笑いだした。かと思えばうーん、と唸り結論が出たかのように立ち上がるとスタスタとキッチンから出て行ってしまった。なんなんだ一体。

暫くして、徐々に皆が甲板へと出てくると朝食を次々と並べ始めていた。すると大きな欠伸をしてパジャマ姿だったなまえが先程とは打って変わり見違えるような格好をして、甲板へと現れた。

「なまえ…?」
「おはよー皆」
「あら、なまえ。どうしたの?その格好」
「えへへ、ちょっと前に街に買い出しに行ったときに買った服。着る機会無かったんだけど着てみようかなって思って」

なまえは先程の寝癖が嘘のように長い髪を綺麗にまとめ、俺が見た事もないワンピースを身を纏わせていた。なんだ。簡単にレディになれるんじゃねぇか。それにいつかは着ようとワンピースまで買っていたとは、少し見くびっていたようだ。あのクソマリモを振り向かせようとあいつは密かに頑張っていたのか。そんな感心と同時にモヤモヤとした気持ちを心に抱いた。

朝食を食べ終え食器を片付けていると視界の端にヒラヒラとワンピースが目に入る。なまえは笑いながらクソマリモと何か話している。なんだこの嫌な感じは。クソマリモも、いつものなまえじゃない姿に少し気になっているのかまんざらでもねえ顔を浮かべている。そんな顔で見るんじゃねえ。

「ねえ、今日もトレーニング見てていい?」
「ああ」

そう言ってなまえとクソマリモは甲板を後にしようと立ち上がった。ちょっと待て。

「…サンジ?なに?」
「…ちょっと話がある」
「え?あ、ちょっ…」

いつの間にか俺はなまえの腕を掴んでいた。そしてなまえをキッチンへと連れ出した。

「どうしたの。折角ゾロを振り向かせようと頑張ってたのに」
「…めろ」
「え?」

「やめろ」

「は?何言ってんの」
「何でそんな格好してんだよ」
「さ、サンジがレディのかけらもねぇ格好してるって言ってたからしたんだけど…」
「っ…」

クソマリモの為にか。そんな言葉が脳裏に過ると俺は思わずなまえを抱き締めた。

「さ、サンジ?」
「……なんであのクソマリモなんだ。…俺には見せた事のねえ笑顔で笑うんじゃねえ」
「……」

ここで初めて自分で言った言葉にモヤモヤしていた気持ちが何なのかを理解した。俺はなまえが好きだ。その瞬間からなまえが凄く愛しくて抱き締める力を強めた。するとなまえが小さく笑った。

「どうして私がワンピースを今まで着なかったと思う?」
「え?」
「どうして私がゾロに見せてる笑顔をサンジに見せなかったと思う?」
「…どういう事だよ?」

突然のなまえの言葉に俺は訳が分からないと顔をしかめた。ふと俺の背中に暖かい感触が触れた。なまえの手だ。

「大好きな誰かさんにずーっと幼馴染みで女の子扱いされなかったから」
「…え?」

先程の言葉よりも更に理解が出来ないでいた。俺は思わず抱き締めていた力を緩め、なまえの顔が見えるように少し体を離した。そこにはクソマリモに見せていたような楽しそうな笑顔ではないがどこか恥ずかしげに、けどとても愛らしいようなそんな笑みを浮かべたなまえがいた。

「私が好きなのはサンジだって言ってんの」
「な…」
「お互い気も遣わないでいれるのが好きだったから、女らしくなんてしたら気持ち悪がられると思って中々ワンピースとかスカートなんて着れなかったの。意識してるなんてバレたらきっと上手く話せなくような気がしたしさ」

顔を赤らめ話すなまえに俺は驚かされてばかりでいた。言葉が上手く出てこない。確かに今までこいつを一度もレディ等と思った事はなかった。なのに、今はなんとも可愛くて愛らしく感じる。俺はそんななまえをもう一度強く抱き締めた。



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