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少し前に転校してきた彼、早乙女乱馬は、同じクラスである天道あかねの許嫁だという。けれど勉強ばかりしてきた私にとってそんな事などどうでも良かった。






それなのに。






「みょうじ!今回も頼む!」
『…乱馬くんて運動神経は良いのに勉強は本当に苦手なんだね』
「しゃーねーだろ?ちっせぇ頃から武術ばっかりの毎日だったんだからよ」
『…日本じゃ考えられない生活だね』

私とは大反対の生活だ。だからこそこうやって乱馬くんと二人でここにいるのだけれど。

転校してきた初日に乱馬くんの間違った問題を何気なく指摘すると何故か尊敬の眼差しで見られ、テストの日が近くなるとこうやって放課後二人で勉強会を開くようになった。

「けど悪ぃーな。付き合わせてよ」
『別に…用事があるわけでもないから。…乱馬くんこそ大丈夫なの?』
「…何が?」
『…あかねちゃん、心配とか』
「はぁ?してる訳ねーよ!」
『でも、許嫁だったら(私との関係を)心配するんじゃ…』
「許嫁ってのは親同士が勝手に決めただけで別にそんなんじゃねーよ」
『…そうなんだ……』



少しだけ安心した自分が恥ずかしくなった。乱馬くんとあかねちゃんがそういう関係ではなかったとして、私がどうこう出来る訳ではない。それに、これからだってどうなるかわからないし、あかねちゃんは可愛い。私みたいな勉強しか取り柄がない女なんか乱馬くんにはきっと見向きもされないだろう。



「…みょうじ?」
『!っへ?あっ…』

ボーッとしていると乱馬くんに呼ばれハッと我に返ると目の前には首を傾げる乱馬くんがいた。

「どーしたんだ?」
『う、ううん!…あ、この問題!テストに出そうな問題だから解いてみて!』
「え?…すっげー難しそうだな…んー」

乱馬くんに問題を渡すと乱馬くんは眉間に皺を寄せ問題とにらめっこを始めた。そんな乱馬くんを可愛いなぁ、なんて眺めながらも少し時間がかかりそうだ、と窓へと目を向け沈みそうな夕日を見つめた。







「みょうじ……みょうじ…」



どこからか、私を呼ぶ声が聞こえる。

「ったく……なまえー」

この声は、乱馬くんだろうか。けれど、乱馬くんは私を名前では呼ばない。

そうだ、これは夢だ。私は乱馬くんが問題を解く間に寝てしまったのだろう。夢でも、乱馬くんに名前を呼んでもらえるなんて、なんて幸せなんだろう。


『…乱馬くん』


夢ならば…。

私は虚ろに手を動かし乱馬くんの手を握った。

「…みょうじ?」






『…好きだよ』





夢の中の乱馬くんは私の言葉に驚いた顔をしたが、すぐに優しく笑った。




夢でいい。乱馬くんが笑ってくれた。
ただ、それだけで、幸せ。







「…告ってすぐまた寝んじゃねーよバカ…人の返事を聞けよな…ったく」

乱馬くんはすぐにまた寝息をたて始めた私に小さく溜め息をつくと椅子から立ち上がりそっと私の額にキスをした。




121121
らんま1/2にて早乙女乱馬。






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