いくつになっても授業はかったるいものだ。そう思いながらいつものように一現目を屋上で過ごしていた。眠気眼で空をぼーっと眺めていると屋上の扉の開く音が聞こえた。誰だ、と扉へと顔を向けると黒く長い髪の毛をなびかせながら生徒であろう女がやってきた。(授業中に何やってんだ?)(…ああ、俺もか)女は校舎の上にいる俺に気付かず外の景色を見るためかフェンスへと近付いていく。そして無造作にスカートのポケットに手を入れ、煙草を取り出した。(おいおい…)
「体に悪いっすよ」
「!」
突然言葉を発した俺に女はこちらへと顔を振り向かせた。女は怪訝そうな顔をして煙草をポケットにしまうとゆっくりと口を開いた。
「…きみは空飛べると思う?」
「…へ?」
女の言葉に思わず声が裏返った。女は笑うとその場に座り込み再びポケットに手を入れ、今度は白い紙を取り出した。何をするのかと思えば、その紙を丁寧に折り、紙飛行機を作り上げた。
「あたしは飛べると思う」
そして、それをゆっくりと手放した。紙飛行機を追う女の横顔がとても切なく見えた。何かあったのか。突如知り合った人の事などあまり興味はないが少し気になってしまう。
「なーんてね」
すると女はまたこちらへと振り向き、にっこりと笑った。その顔はとても綺麗で、濁りのない顔だった。少しの間その笑顔に目を奪われていると終業のチャイムが鳴り響いた。女は立ち上がると「じゃあね」と屋上の扉へと向かった。と思えば「あ」と声を漏らした。
「きみ、あの泥棒に似てるね」
女が去った後、俺の下には紙飛行機が落ちてきた。
110407
名探偵より黒羽氏