Merry Christmas!! 2018 | ナノ


〜♪

「っ!?」

炬燵に入り込んでいれば、いつの間にか意識を手放していた。どれ位の時間が経っただろうか、不意にテーブルの上に置いていた携帯がブルブルと震えて着信音が鳴り出した。その振動がテーブルに伏せていた私の頭に伝わりビクッと反応すれば、寝惚けながらも電話が掛かってきてるのだと理解すると、勢いよく頭を上げて急いで携帯を手に取ると、画面に表示された愛しい名前を確認して、すぐさま通話ボタンをタップした。

「もっもしもしっ…!」
【あー…悪い。寝てたか?】
「いつの間にか寝てたみたい…ごめん…」
【気にするな。お前も仕事終わりで疲れてたんだろ】
「…もしかして、何回か掛けた?」
【いや、…電話は一回だけだ】
「…電話は、って……!まさか!」

文次郎の歯切れの悪い言葉に、ハッと何かに気付くと炬燵から身を飛び出させて、急いで玄関へと向かった。そのままの勢いで靴も履かずにガチャリ、と扉を開ければ案の定、マンションの通路には、寒さで鼻を真っ赤にさせた文次郎が携帯を片手に壁に背を預けて立っていた。

「ごっごめん、文次郎…!」
「…ぶっ、お前…髪ボッサボサだし涎の跡付けたまま出て来るなよ」
「えっ!!」

暫く待たせてしまったのであろう文次郎に、私が謝ると、文次郎は特に気にする様子もなく、私の顔を見るや否や噴き出して笑い出した。そんな文次郎にかあっと顔が熱くなると、今度は急いで洗面所へと向かい、顔を洗い髪を直した。そんな私の後に続き、笑いを落ち着かせながら家の中へと入ってきた文次郎は、漸く暖かい空間に入る事が出来た安堵を漏らす様に「暖けぇ…」と小さく呟いた声が、私の耳に入ってくると、再び罪悪感が蘇った。

「本当にごめんね。いつもは、もう少し遅い時間だからって油断してて…」

そっと文次郎に歩み寄り、十分に冷え切ってしまった文次郎の手を優しく包み込む。

「言うほど待ってねえから気にするなって。今日は、お前がクリスマスを凄え楽しみにしてたから、その…早めに切り上げたんだ…。俺だって、いつも仕事が遅くなってなまえを待たせちまってるんだ。…すまん」

すると文次郎は、柔らかい笑みを私に向けたかと思えば、きまりの悪そうな表情に変わり、同様に謝罪の言葉を口にすると、片方の手は私の手を握り、もう片方は背中に回して、ぎゅっと私を抱き寄せた。文次郎の体全体も十分に冷え切っていたが、部屋に充満した暖かさからなのか、文次郎に抱き締められている心地良さからなのか、心がじんわりと暖かくなり始める。

「私は、こうやって文次郎と会えるのならいくらでも待てるから大丈夫だよ。でも、私の為に急いで仕事を終わらせて来てくれたのに、寝てたなんて、やっぱり…」
「俺だって、お前に会えれば何だって良いんだよバカタレ…」

文次郎に包まれているという実感が身体中から伝われば、待ち呆けていた事などちっぽけな物だと思えてしまう。そんな私の言葉に、文次郎は照れた様にぶっきら棒にそう言葉を返すと、ぎゅうっと私を抱き締める力を強めた。私って、本当に幸せだなあ。


「…なまえ」


不意に、文次郎が私の名前を呼んだ。返事をする代わりに顔を上げれば、文次郎は何故か鼻だけでなく、頬まで赤く染めて、私から目を背けていた。

「どうしたの?」
「…その、…」
「?」

歯切れの悪い文次郎に首を傾げる。

「…〜〜っ」

いつまで経っても次の言葉を出せない文次郎は、再び私を強く抱き寄せると、耳元で囁く様に「好きだ」と言ってくれた。そんな文次郎に別に付き合いたてでも無いし今更何を恥ずかしがっているんだと思いつつも、きゅう、と胸が苦しくなると、徐々に頬が綻びにやけてしまう程に嬉しさが込みあがった。

「私も大好きだよ」



(日付が変わっても私達の甘いクリスマスはこれから始まるのです)

×