似た者同士の喧々劇 | ナノ


それにしても。

「ねえ、ところであの二人の言い合いっていつまで続くの?」

母さんはすぐに落ち着くだろうと言っていたが、他の生徒達もすっかり朝食を食べ終えて授業の準備に向かって食堂を出て行き、私も遅ばせながら完食するも、未だ言い合いを続ける潮江と食満くんを見るとげんなりしてきた。先程まではあんなにも爽やかだった食満くんも、今じゃ潮江と同様にムキになって言い合っている姿を見ると、失礼だが似た者同士と言われている事に少し納得してしまう。

「ああ、まあもうすぐ授業も始まりますし、お残しは食堂のおばちゃんが許しませんから、もうそろそろ終わるでしょう」
「それにしても、食満くんもあんなにムキになるなんて思ってなかったわ。食満くんは違うと思ったんだけど、こうして見るとやっぱり似た者同士なんだね」
「そういう名前さんも文次郎と言い合ってる時はあんな感じでしたよ」
「え!?本当!?」

七松くんにきょとんとした顔で言われて思わず顔が引き攣る。凄い嫌だ。もしかして私もあんな風に幼稚な言い合いして、皆から白い目で見られてたの?当人同士、言い合ってる時は気付かないもんだが、側から見れば私もあの二人と似た者同士……いやいや、食満くんは兎も角、潮江と似た者同士なんて冗談じゃない。


「でも、留三郎とは仲悪くないですよね?」

その時、ふと疑問に思ったのか善法寺くんにそう言われて、調理場に御膳を片しに向かいながらも私は口を開いた。

「うん。悪いどころか、私の料理まで褒めてくれて凄く優しいし、食満様様だよ」
「「「「(あ、二人が聞き耳立ててる)」」」」
「毎日毎日残飯だの、動物の餌だの文句しか言わない潮江とは大違「うるせえ!はっきり言う奴が一人でもいないとこいつはいつまで経っても上達しないだろ!」…なっ、」

すると、今の今まで食満くんに向けられていた潮江の敵意が一気にこちらに向くと噛み付く勢いの暴言が私へと襲い掛かってきた。そんな潮江の突然の猛威に私は吃驚すると同時に苛立ちを覚える。

「っだからって、人が一生懸命作った料理をそこまで言う必要ないでしょうが!」
「一生懸命作った料理の見た目があれなら矢張りお前には才能ねえって事だ!今すぐ作るのやめろ!」
「っあんたね…!毎日毎日大人数の料理を作る身にもなりなさいよ!」
「そうだぞ!名前さんは先生と生徒の分の食事を作って大変なんだ!少しは労いの言葉でも掛けてやれねえのかアホ文次郎!」
「食満くん!君ってば、何て良い子なの…!」
「私は名前さんの味方です!」
「お、お前ら…!」

私の言い返した言葉に便乗した食満くんは、何とも心強い。そんな私と食満くんが結託した様を見て思わず潮江がたじろぎ始めた。ざまあみろ!


「食満くん、潮江くん」


そんな中、ふいに調理場から出てきた母が、漸く二人に声を掛けると、私を含めて一斉に母を見遣った。…あれ。と言うか、いつの間にか私達以外の皆がいなくなってる。

「もうそろそろ授業始まるわよ」
「「え!?」」
「さっさと食べて授業に行きなさい。勿論お残しは許しまへんで!!」
「「!!いっいただきます!!」」


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