似た者同士の喧々劇 | ナノ


「誰がイチャついてるってんだ」
「お前の他に誰がいる。忍者を目指してる奴が在ろう事か三禁も守れんとは何とも情けねえ奴だ」
「勝手な事ぬかしてんじゃねえ!てめえこそ、毎日毎日名前さんの作る料理にいちいち我儘言いやがって、忍者なら忍者らしく黙って食べろ!」
「我儘じゃねえバカタレ!俺は味についてとやかく言ってるんじゃねえ、見た目が」
「それが我儘だって言ってんだよ」
「この野郎…!」
「やるか!?」


「…母さん」
「なに?」
「あれ、放っておいていいの?」
「まあ、すぐに落ち着くわよ。それより、他の皆もそろそろ起きてくる頃だから、小鉢の用意とかしちゃいなさい」
「(…ま、いっか)はーい」

二人が睨みいがみ合う中、私は母にそう言われると急いで調理場へと戻り御膳に小鉢を並べ始めた。


そうこうしている内にぞろぞろと先生や生徒達がやってきて食堂は賑わい始める。そんな中、流石忍術学園の先生、生徒達だと思う。未だに言い合っている潮江と食満くんに最初は驚きつつも、すぐにスルーして朝食を食べ始めていた。

「大体会計委員が予算を出さんからだろう!」
「会計委員のせいにするな!真面に管理出来てない用具委員のせいだろう!」
「喧しい!元を辿れば…!」

言い合いは尽きる事無く、いつしかお互いの委員会の責任のなすり付け合いまで発展している姿を見れば何とも呆れてしまう。

「名前、皆も食べ終わる頃だしあんたもご飯食べちゃっていいわよ」
「母さんは?」
「私は後でいいわよ」
「わかった。じゃあお先にいただきます」


母から許しを貰うと、私は自らでよそった朝食を持ち調理場から出ると空いている席を探し、キョロキョロと食堂を見回した。

「皆、お邪魔していい?」

ふと目に付いた場所へ足を進めると、朝食を食べ終えて暫し談笑をする六年生の皆に声を掛けた。

「ええ、構いませんよ」
「ありがとう、立花くん」

快い笑顔を向けてくれた立花くんに笑顔を返すと、私は立花くんの隣へとお邪魔した。そして自分が作っているんだから当たり前に見慣れている悲惨な見た目の朝食に手を合わすと、お箸を動かし始めた。

「…もそ」
「えっ?ごめん、何て言ったの?」
「お疲れ様ですって言ってます」
「おお、ありがとう中在家くん。七松くんも、よく聞き取れたね」
「小平太は長次と一年生の時から同室で仲良いですからね」
「へえ、そうなんだ。因みに善法寺くんは誰と同室なの?ハッ、まさか潮江?」
「あはは、違いますよ。僕は留三郎と一緒です」
「なーんだ。それは良かった……て事は、潮江と同室なのってまさか…」

中在家くんから労いの言葉を頂き、それをきっかけにそのまま楽しく会話を繰り出せば、ふと、あの憎たらしい隈野郎と同室の哀れな生徒は誰なんだと疑問を持った。此処にいる中在家くんと七松くんが同室で、善法寺くんは食満くん。という事は残っているのは…。そこまで考えて、唯一名前が出てこなかった隣に座る色白の青年を見遣る。

「ええ…お察しの通りです」
「うわあ…可哀想…」

立花くんが溜息を吐きながら頷いた。え、まじで可哀想。あんな短気そうな奴が同室だと事ある毎に文句を言われてストレスが半端ないのでは無いか。そんな心配を向ければ、立花くんは意外にもニッコリと笑った。

「実の所、文次郎はあまり部屋には帰ってきませんから大して心配される事はありません」
「えっそうなの?ああ、そう言えば会計委員会で遅くまで鍛錬してるんだっけ」
「ええ。委員会でも勿論ですが、一人でだったり長次や小平太ともやってるみたいなので」
「…鍛錬バカじゃん…」
「仰る通りです」
「文次郎は学園一ギンギンに忍者してるって言われてる位ですから」
「もそ」
「ギンギン…?何それ」
「あいつの口癖です」
「うわあ…一歩間違えれば変態じゃん。いや、と言うか既に変態なんじゃ…」
「…名前さん、それ絶対本人に言っちゃ駄目ですよ。また面倒な事になりますから」
「あはは、わかってるわかってる」

困った様に善法寺くんに言われて私は頷くも、堪らず笑いを零してしまった。どうやら気持ち悪いのは隈だけでは無い様だ。もしその変な口癖を耳にした時は全力で弄ってやろう、と心で決めると何だか愉快な気分になった。


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