ホワイトデー小話【鬼灯・白澤】


---鬼灯---


「あ゛〜〜今日も徹夜か……」
「仕事が山積みですからね、頑張るしかありません」
「く〜〜っ現世では今日はホワイトデーだってのに」
「…貴女もそういう行事に興味あったんですか」
「…まあ一応これでも女ですからね、鬼ですけど。ほらこの前のバレンタインに食堂に【ご自由にどうぞ】って置いてあったお菓子のバケットあったでしょ？あれ私も参加したから」
「おや、そうだったんですね。知らなかったです。あれ私も頂いたので、お返ししなければいけませんね」
「いいわよ別に。義理で置いてたものだし不特定数に配布したものだから」


「いえ、貴女には元より用意してたので」


「…へ？」
「これがどういう意味だか、お分かりですよね？」
「…え、あ、ひ、日頃の感謝…とか」
「勿論それもありますが、わざわざホワイトデーに見計らって渡しませんよ」
「…じゃ、じゃあ、その…」

「出来れば、私の気持ちともども、受け取ってほしいんですがね」
「！！」




---白澤---


「ハッピーホワイトデー！」
「…何を仰ってるのかよく分かりません」
「相変わらずつれないなあ。まあそういうところも好きなんだけどね」
「金丹も受け取りましたので私は地獄に帰りますね」
「あー待って待って！せめてホワイトデーのお菓子だけでも受け取ってってよ」
「…どうせ他の女の子にも配ってるものでしょう。私は受け取りません」
「そんな事言わないでさ。確かに他の女の子にも渡してるのは認めるけど、君には絶対受け取ってほしいんだ」
「…どうしてですか」
「どうしてって、そりゃあ僕は君が好きだからだよ？」
「…他の女の子にも言ってる事と何一つ変わりないじゃありませんか」
「それはそうなんだけどさ。…んー、他の女の子には受け取って貰えなくても悲しいには悲しいけど、まあ仕方ないなあって思えるんだ。でもどうしてだか君にだけはいくら拒否されても渡したいって言うか」
「……」

「きっと君は特別なんだよ」

「…きっとですか。確信的では無いんですね」
「愛ってそんなもんじゃない？」
「不特定多数と寝る神獣が軽率に愛を語らないで下さい」
「あはは辛辣だなー。でもやっぱり僕は君が好き。受け取ってくれなきゃ毎日地獄まで行って追いかけ回しちゃうよ」
「…仕方ないですね、追いかけ回されるのは死んでも嫌なので今回は受け取りますが、気持ちに応えるつもりはありませんからね」
「え〜。うーん、ま、いっか」