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「うー寒い」

学校からの帰り道。随分と寒い季節になり指先の感覚が無くなってきた。はあ、と息を吐き手を暖めていれば、じいっと隣を歩く綾部が見つめてくる。

「なに?」
「寒いなら手袋すればいいのに」
「…鈍感だなあ、綾部は」
「?」

意味がわからないと言った綾部の表情に私は気にする事もなく再び息を吐いた。

こうしてれば、綾部が手を繋いで暖めてくれないかなあ、なんて期待してみるけど。

「…疎いもんなあ」
「何言ってるの?」
「…別に。あー本気で寒い…」
「馬鹿だなあ」
「…どうせ馬鹿ですよーだ」
「ほら」
「…え?」

不意に綾部から何かを渡され受け取れば、じんわりと手のひらに熱さが広がる。

「…カイロ」
「今日だけだからね」

ほら、やっぱり気付かない。
本当は手を繋いでほしかったのに。人工的なものじゃなくて、綾部の温もりが欲しかったのに。

「…ありがと」

それでも、綾部の何気ない優しさに十分心はホカホカになるんだから、不思議だ。


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