Change the Body!! | ナノ


「私は絶対怪しいと思うんだけど」
「そうか?私はどっちでも気にしてないのだが」
「小平太、あんたみたいな馬鹿は黙ってて」
「なははは!馬鹿って言うな馬鹿」
「俺は未だそこまで見てねえからなあ…」
「文次郎、あんた仙蔵と同室でしょ?ちゃんと見ときなさいよ馬鹿」
「ばっ…!?」
「偶々伊作が運良いだけだろ」
「不運大魔王と恐れられた伊作に運がある訳ないじゃない。留三郎あんただけは信じてたのに。馬鹿じゃないの」
「ばっ…!?」
「…仙蔵も、偶に傷だらけの時はある」
「それは一年の喜三太としんべヱがいる時の話でしょ?長次まで疑うなんて酷いわ馬鹿」
「…馬鹿という方が馬鹿だ」

はあ。こいつらと話していても拉致があかない。どうして私の言うことを信じてくれないの。
盛大な溜息をつけば、食べ終えた定食に手を合わせて席を立ち食堂を後にした。


ここ最近、仙蔵と伊作の様子がおかしい事に気付いた。話しかければ特に変わりないのだが、どうにも素振りが偶におかしいと感じるのだ。同室である文次郎も留三郎も今のところ目の当たりにしていないらしく、異変に気づいていないみたいだが、私は運良く(?)二人の様子を見てしまっていた。

二日前の事。
図書室へ借りた本の返却に向かっていた所、少し前方を歩いていた仙蔵に何気なく声を掛けようと歩み寄っていると、突如仙蔵が廊下で滑って転んで運んでいた生首フィギュアを被ってしまった。(え……)いつでも冷静を装い完璧主義者である彼の醜態を目撃してしまった私はその時は見てはいけない!と脳で判断すればその場から勢いよく去った。(きっと疲れていて偶々何もないところで滑ってしまったのね…。大丈夫、この事は誰にも話さず墓場まで持っていくわ…!)

だが、それだけでは無かった。

夕方ごろに再び仙蔵の姿を見かけ、何やら倉庫に向かう途中だったのか駆け足だった姿をつい目で追えば、突如彼の姿が消えた。(忍者のたまごなのだから、一瞬にして姿を眩ませる事は容易だと理解はしているが、この場面でいきなり姿を消すのはおかしい…)突然の事に私は思わず仙蔵が居た場所へと向かってみれば、足元に大きな穴が空いていた。(…まさか…そんな、)穴を見た瞬間、嫌な予感が私の中に生まれ冷や汗をかいた。そして、恐る恐る穴の中を覗けば…。

「!」

仙蔵が、穴に落ちて気を失っていた。(そんな…!仙蔵が…!?)



そして時は過ぎ昨日の事。
二日前は仙蔵が穴に落ちたと言う驚愕に思わず固まってしまったが、あのまま気絶した仙蔵を放置すればきっと下級生とかに見つかって仙蔵の醜態が皆にバレてしまうと踏んだ私はどうにか仙蔵を運び出し倉庫へ移動させた。暫くすれば意識を取り戻してくれるだろう。そう思い私はその場から立ち去った。

それにしても、あの仙蔵が一日に二回も失態を晒すなんて。病気だろうか。ならば、仙蔵には申し訳ないが伊作に相談しよう。そう思い私は医務室へと足を運んだ。


「伊作、少しお話があるんだけど…」
「やあ、なまえ。どうしたんだい?」
「それがね…かくかくしかじか」
「!…ああ、そうなんだ。それは心配だね」
「(…?)」

伊作に事の経緯を説明すれば、何故だか目を見開き一瞬固まった気がした。だが、気のせいだったのかすぐにいつもの柔らかい笑みを作ると、今まで薬を煎じていた手を再び動かしテキパキと委員会活動に励み出す。(…あれ)いつもの見慣れている様子だと言うのに、私はなぜかそこで違和感を感じた。…伊作が、不運に見舞われていない…!?

いつもなら、大抵そろそろ不運が発動して棚から薬や救急箱が落ちてくるというのに、何故何も起きていないのか。

「…珍しいわね、伊作が、不運にあってないなんて」
「(ギク)…や、やだなあ。僕にだって偶にはそういう日もあるんだよ」
「…ふうん。そう言えば、仙蔵の様子は何だか伊作の不運に似てる気がするわね」
「(ギク)…ははは、もしかしたら仙蔵に僕の不運が感染ったのかも知れないね」

ますます怪しい。そう思えば、いつもの伊作の柔らかい笑みもどことなく、張ったような、引き攣った笑みに見えてくる。…まさか。



「私が思うに、二人が入れ替わってるんじゃないかと思うのよ」



そうして、冒頭にもどる。
だが、勿論私の言葉を信じず間抜けな顔を提げた同級生の野郎どもに罵声を浴びせた私は、何としても謎を暴いてやる、と心の中で意気込むと「人生はスリルとサスペンスね…!」と弟さながらの台詞を呟き、その場から勢いよく駆け出した。



完璧主義と不運大魔王が入れ替わったら



「伊作!貴様、私の体で不運を発揮するな!危うく鶴町なまえにバレてしまうところではないか!いや、最早気付かれてるかもせん…」
「す、すまない仙蔵…でもどうにもこればっかりは防ぎよう無いし…」
「はあ…出来る限り騒ぎを大きくしたくないと隠してると言うのに…」
「(うわあ…僕の顔でその顰め面は、何か複雑な気持ちになるなあ…)」
「…伊作、今の様なその間抜け面は絶対に他の奴らに見せるなよ…」
「き、気をつけるね…(お互いに思う事は一緒、か…)」



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