青春16切符 | ナノ


「これより中高合同生徒会及び委員会対抗で、大隠れ鬼ごっこを開催する!」

意味わからないって。
何これよりって。何大隠れ鬼ごっこって。



夏休みももうすぐと言ったところで短縮授業になった今、午前で授業が終わり、いつもより早い放課後を迎えるべくHRが終わると同時に、放送がかかったかと思えば生徒会と委員会メンバーのみで急遽集会が開かれた。そして壇上に現れた学園長先生がいつもの変な思いつきを口にした。

私は勿論の事、他の生徒達も唖然とする中、学園長先生は気にも止めずに言葉を続ける。

「まず生徒会は中高一グループに纏まってもらう。そして生徒会からは高等部生徒会長、後の各委員会からは委員長がそれぞれ鬼になり、くじ引きによって決まった生徒会、委員会のメンバーを捕まえると言ったルールじゃ。逃げるメンバーへは一人一つ紙輪を配る。それを腕につけ鬼に取られない様に守るのじゃが…中高合同の為、鬼であるメンバーと中等部との体力差を考慮し、ハンデとして中等部の各生徒会、委員会に配属する人数に応じて追加で紙輪を配る。勿論、それをつけるのは誰でも良い。逃げる範囲は高等部敷地のグラウンド及び校舎内のみじゃ。…なお、決められた制限時間内で一人でも生き残った委員会には特別手当として今期予算の追加を認めよう」

「「「「「「!!」」」」」」

「但し、追加出来る予算には勿論、限りがある。生き残ったグループが多い程割り振られる予算は少なくなるぞ。…言いたい事はわかるな?」

「「「「「「はい!!」」」」」」

ルールを聞いていた間、静まっていた生徒達だったが、優勝賞品があると聞けば、一気に盛り上がりを見せ始めた。つまり、生き残ったグループが少なければ少ない程予算は多く手に入る。ならば、敵である各会を一つでも多く全滅させなければいけない。そんな思いが各会で渦を巻き、皆息巻いていた。

だが、私に優勝賞品が何だなど興味はまるでなく、この上面倒くさい事はないと項垂れる。

「何だ隠れ鬼ごっこって…」
「隠れつつ鬼から逃げるから隠れ鬼ごっこ」
「そんな事はわかってんのよ友名前。私が言いたいのは何でこの歳になってまでそんな事しなきゃいけないのだと言ってるんだよ」
「そんな事言ったら僕達より上のニ、三年生が可哀想だよ」
「…可哀想だと思えない位に奮起してるけどね」

喜八郎の言葉に私達より年上であるニ、三年生へと目を向ければ、比較的闘争心が強い上に、思いもよらなかったであろう優勝賞品に各長達はかなりのやる気を奮い立たせ、捕まえる委員会を決めるくじを引く為、演壇前に集まっていた。


「ーよし、各長くじは引き終わったな」
「私が読み上げましょう。えー…」

くじを全員引き終え、山田先生が一人ずつにくじを貰うと目の前で開いていく。

「生徒会長立花仙蔵は美化委員会!」

「飼育委員長竹谷八左ヱ門は保健委員会!」

「保健委員長善法寺伊作は体育委員会!」

「美化委員長食満留三郎は図書委員会!」

「体育委員会七松小平太は生徒会!」

「図書委員長中在家長次は飼育委員会!以上!」


…待て。
待て待て待て待て。
今…なんて?

「「「……」」」

くじの結果にサッと血の気を引かせたのは、私だけでは無かった。両隣にいた友名前と喜八郎も、他の生徒会メンバーも同じ様に固まっていた。

「え、七松先輩って。やばくない?」

暫く黙っていた私達であったが、ポツリと零した友名前の言葉に私と喜八郎も冷や汗を掻き、各々の顔を見合わせると七松先輩へと視線を向けた。


「なはははは!お前らー!全員捕まえて(バレーでボコボコにした挙句ミンチにして)やるからなー!」


視線を向けた矢先に七松先輩と目が合えば、ニッと笑って私たちにそう叫んだ。そんな七松先輩の心の声(のような私の解釈)が聞こえた私には、ふいに目眩が襲った。



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