おやすみのちゅーからの結果オーライ
突然、廊下をどたばたと走る音が聞こえあたしとあかねはひょっこりと部屋から顔を覗かせた。
「待て!下手に出てりゃつけあがりやがって!」
カポーンッ!!
するとそこには、子ブタのままの響良牙を追いかける女の乱馬の姿があった。(…あ、そうだ)先程とは違う乱馬の態度にあたしはふと思い出した。(そう言えば、此処で響良牙は呪泉郷に落としたパンダと女は乱馬と玄馬さんだって知ったんだっけ…)(成る程。それで怒って攻撃してきた響良牙を自身もろとも変身させたってっところか。…それにしたって…)
「ちょっと乱馬!何すんのよ!」
『そうだよっ!(いくら中身が響良牙だからって)こんな可愛い子ブタに洗面器投げるなんて!』
乱馬と響良牙の様子を見ていたあたしとあかねは子ブタを匿うように掴まえ、乱馬へ怒鳴る。
「きたねーぞ!女の後ろに隠れるなんて!」
「フーッ」
すると、乱馬の言葉が許せなかったのか響良牙は乱馬を威嚇すると勢いよく飛びかかった。
「このくそブタ!話し合おうっつってんのがわかんねえのか!」
ぐしゃっ!
「『やめなさいっ!!』」
「にゃあ!」
そんな響良牙を乱馬は容赦なく床へと押し潰すと、それを見たあたしとあかねは瞬時に乱馬の胸を鷲掴んだ。
「しっかりして」
あかねは床に押し潰された響良牙を優しく抱き上げた。(…かっかっ…!!)抱き上げられた響良牙は子ブタで非力な自身に悔しくてぼろぼろと泣いていた。(可愛いすぎてたまりませんっ!!)あたしはまたあかねごと抱いてしまいそうな体を必死に抑え隣で見ていた。(くそう…あたしも泣きそうだ)
「かわいそーに。行こ」
「あっおいっ。どこ連れてくんだよ」
あかねはそんな響良牙をよしよしと慰めすたすたと歩き出す。そんなあかねに乱馬が尋ねるとくるっとあかねは振り向き口を開いた。
「抱いて寝るのっ」
「んなっ!」
「なまえ、この子と一緒に寝ていい?」
『えっ(はっ)うん!あああかねがそんなに言うなら毎日一緒に寝てあげてよ!』
まさかあかねから切り出されるなんて、と驚きつつもこれは原作に戻れる傾向だとあたしは神様に感謝した。
「(そんなにって一回しか言ってないんだけど…)でも、なまえは大の動物好きなんでしょ?今日はあたしで、明日はなまえ…」
『あ、あたし寝相悪いからっ!』
「…そう?じゃあ、なまえちゃんにおやすみのちゅーしてあげよっか」
『…ふえ?』
ちゅっ
「あーっ!!!」
あかねの言葉に思わず素っ頓狂な声を出した瞬間、目の前には子ブタ…響良牙がいた。そして、唇に何かが触れた。
「なっ何なまえにちゅーさせてんだあっ!」
どういう状況かをご丁寧に説明して乱馬は目を見開かせ、あかねへ叫ぶ。
「なによお。何で乱馬が怒るのよ。嫌だった?なまえ」
『えっ!?そっそんな訳ないじゃんか!(鼻で良かった…!)』
「ほら」
「〜〜っばかやろお!」
すると乱馬は再び叫んでどたたた!と自分の部屋へと戻っていった。(…てか、何で乱馬が怒る訳?)
『ふあぁ…やっと眠れる…』
あれから部屋に戻り、ベッドに潜ると大きな欠伸をひとつ落とした。思わぬ事に響良牙(いやあれは子ブタだ。子ブタにしか思わない…)の鼻にちゅーをしてはしまったが、これからは原作通りあかねと響良牙は一緒に寝ることになったし、確か今日乱馬があかねの部屋から響良牙を連れ出そうと忍び込むはずだから、徐々に原作に戻っていくだろう。(何だかどっと疲れたけど…ま、結果オーライって事で)あたしはそのまま眠りについた。
それから数時間後、あかねの部屋からは大きな平手打ちが聞こえてきた。
翌朝。
「乱馬くん、夜這いかけるんだったらも少し静かに…」
「私はね、いきなり夜這いはいけないと思うのよ」
「元気があってよろしい」
『ま、許嫁なんだしねー(原作通り…!)』
「違う〜〜っ!!」
「(なんちゅー家族なの)」