後悔は、していない
『はあ…はあ…』
「…なまえ…!?」
あたしは無我夢中であかねの元へと走った。
そして、あかねを庇い、勢いよく地面へと転がるとすぐさまあかねを見た。(髪は…!)
『…良かった…!髪の毛、切れてない…』
「!!…あたしを庇ってくれたの…!?」
どうやら、あかねの髪は無事だったようだ。あたしは心の底から安堵を漏らすように息をついた。その時、何故か肩と足に痛みを感じた。
『…あれ、何か肩が』
「!なまえが怪我してるじゃない!」
『足もぐねったみたい…あはは』
「ばか!」
肩を見れば血が出ており、あかねの髪を庇った代わりにあたしの肩が切れ、足をぐねったらしい。けれど、心配そうに見るあかねにあたしは笑った。
『あかねの髪が無事だったんだから、これくらい、どうって事ないよ』
「なまえ…」
『…(さて、どうしたものか…)』
やってしまった。
原作をあたしは変えてしまったのだ。これから、どうなってしまうのかはわからない。(…けど良かった)だが、原作では無残にも切り捨てられた髪の毛が、あたしが変えてしまった事によりあかねの元で綺麗になびいている。そんな姿を見れば不思議と先程までの不安は無く、心が穏やかになる。(後悔は、していないって思える)
『だって髪は女の命だもん。…ね?』
「っ…」
再び笑ったあたしにあかねは涙を浮かべるとありがとう、と小さく告げた。
「…あんたたちのせいで……!」
『…あかね?』
少しばかり泣いていたあかねはゆっくりと立ち上がったかと思えば、わなわなと震え出し一部始終を静かに見ていた乱馬と響良牙の元へ向かうと「他人に迷惑をかけるな!」と思いきりビンタを食らわせ、あたしを連れてほねつぎへと向かった。