乱馬が一番マシ
響良牙の言葉にあーあ、とあたしは声を漏らした。男からすれば女みたいだと言われればそりゃあ腹立たしい言葉なのだが、乱馬にとってはNGワードと言って良いくらいの言葉だ。(実際女になっちゃうからね)
「俺のどこが女だっ!!」
「おっと!」
乱馬はよっぽどカンにさわったのか、声を荒げて響良牙へと飛び掛かった。だが、響良牙はそれを避け、二人はグラウンドのフェンスを超えてどこかへ行ってしまった。あたし達もそれを追った。
ブシューッ!!
「わっなんだ、あの水柱!!」
その時、少し遠くから水柱が立った。
「水飲み場の方だ!」
「乱馬…!」
『ちょっと、あんなのかぶったら女に…』
「っ急ぎましょう!」
あたし達は生徒達に見られる前にと急いで水飲み場へと向かった。
「誰に見えるってんだ大ボケ野郎!!」
あたしとあかねが水飲み場へと着くと、乱馬の甲高い叫び声が聞こえる。(ああ、やっぱり)あたし達の予感は的中通り、既に乱馬は女になってしまっていた。
『ら、乱馬っ』
「胸っ!!」
「え?…あ」
そして先程破れてしまった服の間から胸が見えており注意すると乱馬は咄嗟に胸を隠す。(なんだかんだで女の慎みが身に付いてきちゃってるよ乱馬)そんなやり取りを見ていた響良牙は信じられない、と言った顔をしていた。
「乱馬…おまえ…」
「……ふん…おかしけりゃ笑っていーんだぜ。良牙、お前がどうして俺を恨んでるのか知らないけど…俺だってこんな体抱えながら明るく正しく生きてるんだ!」
「ふっ…くくくくくくくっ!」
すると、乱馬の言葉に響良牙は笑いだした。
「笑止!貴様の不幸とはその程度か!そんな可愛いらしい姿で…不幸を振りかざすとは…っ片腹痛い!!」
響良牙の地獄と乱馬の不幸は比べ物にならないらしい。(…というか、あたし含めてこの中で一番マシなのって乱馬じゃね?)ふと、響良牙の言葉に妙にあたしは納得してしまった。可愛いらしい姿で九能帯刀という何とも面倒くさい相手にというのはあるが、男にもてはやされる乱馬に比べ、あたしはあかねに最初は嫌われ、九能帯刀には冷たい態度をとられ、少なくともあたしの方が不幸な気がしてきた。(…いやいや、今はそんな事考えている場合じゃない)
「なまえ!伏せろ!!」
『へ?…わっ!!』
思わず考え込んでいると、乱馬の声が耳に入る。なんだと振り向けば、目の前には物凄い勢いで飛んでくるバンダナ。あたしはギリギリでそれを避ける。
「おっいたいた!」
その時、生徒達の声が聞こえてきた。