重い傘と乱馬の本気
何とも呑気な乱馬に思わず力が抜ける。すると、あたし達の後ろで観戦していた生徒達が何だか騒がしい。なんだ、と振り向くと先程響良牙が投げた傘がUターンし、生徒達にも襲い掛かっていた。(あ、確かあの傘って)あたしがふと、傘について思い出していると傘を持とうとした生徒が驚き声をあげた。
「わっ!なんだ!?この傘!」
「!どうしたの?」
「もんのすごく…重いっ」
騒ぎを聞いたあかねは傘を持って確かめるが重すぎて持ち上げられなかった。そう、響良牙が持っていた傘は物凄く重い。そして、その傘をいとも簡単に振り回し、投げた響良牙は物凄い腕力を持っている。
「っ乱馬!接近戦はダメーっ!!」
あかねは響良牙の底知れぬ腕力に、乱馬へと叫んだ。だがそれは既に遅く、響良牙は乱馬へと拳を突きだしており、それを避けた乱馬の頬には拳を掠めただけなのに血が出ていた。すると乱馬は血を手で拭いぺろっと舐めた。
「しゃーねえ。そろそろ本気出させてもらうか…」
「乱馬!そいつの腕力化物並よ!早く離れて!」
あかねの叫び声がグラウンドに響き渡るが、バンダナで腕を掴まれている乱馬は響良牙から離れる事が出来ずにいた。
「ふっ…今頃気付いても遅っ…」
響良牙が乱馬へ再び拳を突きだすと、フッと乱馬が視界から消える。乱馬は響良牙の股をくぐり足で響良牙の首を掴み一回転すると響良牙は四つん這いになってしまった。
「さー良牙、どうしてほしい?」
「…よくも、俺を四つん這いに…!」
「ん?」
形勢逆転したように乱馬が笑うと響良牙は片手を地面につけぐっと逆立ちするように体を持ち上げた。そんな響良牙に生徒達はざわめいた。そして…。
「させてくれたなーっ!!」
そのまま大きく飛び上がった。
「う、腕一本で飛んだ!」
「うそっ!」
更に生徒達がざわめくが、勝負はまだ続いている。空中で響良牙が乱馬に蹴りを繰り出すが乱馬はそれを避けると体を地面に近付くように移動すると先程の響良牙と同じように片手を地面につけ、響良牙を両足で蹴りつけた。本気の乱馬はいつもよりも素早くあたしとあかねは呆気に取られていた。(本気の乱馬と戦ったら負けるかな)それに加えて、あたしにはまだ戦いたいと思う気持ちでいっぱいだった。
響良牙はそれを食らい、大きく飛んだ拍子にバンダナも千切れ、あたしとあかねががいた近くの芝生へと叩きつけられた。
バッ!
ババッ!
間髪いれず乱馬は響良牙に飛び掛かるとお互い蹴りを炸裂する。その時、一瞬の隙をついた響良牙が転がっていた己の傘を手に取り素早く乱馬へと突いた。乱馬はそれを掠めると響良牙へ蹴りを食らわした。
「あっ!!」
その時、傘を掠めた乱馬の服が破れてしまった。
「この服、気に入ってたのにっ!」
「勝負の最中に…」
言葉通り、勝負の最中だと言うのに敗れた服を気にかける乱馬に、よろめきながら立ち上がった響良牙が勢いよく乱馬へ叫んだ。
「女みたいな事ぬかすなっ!!」
「(むかっ)」
『あ、地雷踏んだ』