一旦落ち着きましょう
「お前、名前は?」
『みょうじなまえです…』
「俺は早乙女乱馬だ。乱馬でいいぜ」
【玄馬です】
「じゃあなまえ、お前は崖の上にいて、足を踏み外して泉に落ちそうになって竹にしがみついてたんだな?」
『そうです…』
「でも、俺とぶつかって結局泉に落ちたって訳か」
『そうです…』
【うちのバカ息子がご迷惑おかけしてすいません】
「元はと言えばてめーのせいだろくそ親父!!」
『……(目の前に早乙女乱馬と早乙女玄馬がいて会話してるなんて…まだ信じられない)』
あれから、あたし達は呪泉郷の側にある家へと入ると、着ていた制服から予め持っていたジャージに着替え(男の姿で制服はいくら何でも恥ずかしい)一旦落ち着くと、早乙女乱馬もとい、乱馬と早乙女玄馬もとい、玄馬さんと状況を整理し始めた。何故竹の上にいたかと聞かれ咄嗟にあたしは嘘をつく。(車に跳ねられたら竹の上に落ちましたなんて言ったって絶対信じてくれないだろうし)
「はい、お客さん。お湯被ると元に戻るよ」
『あ…どうも』
片言を喋る男がやかんを持ってくると、あたしの頭にお湯をどぼどぼとかけ始めた。(おいこれ熱湯なんですけど熱すぎるんですけど)そしてあたしと乱馬と玄馬さんは元の姿へと戻った。
「しかしなまえさん。見たところ日本人じゃないか。それに制服を着ていたし、一体全体どうして中国なんかに…」
『う……それは(そんな的確に聞かれると……よし)じ、実は修行に!』
「「修行ぉ??」」
思い付きのあたしの言葉に乱馬達は声をハモらせた。(やっぱ無理?)
「なんでお前みたいなか弱そうな女が修行に?」
『(ムッ)これでも運動は得意なんです。小さい頃から空手を習っていて(これは本当)、中国の拳法とかにも興味あって(これは嘘)…』
「で、なんで制服なんだよ」
『い、いきなり来たくなったんで!』
「いきなりすぎるだろ…」
『……』
確かに、自分で言っといて何だが、制服を着替えずに勉強鞄一つ持って今から中国に行こうなんていきなりすぎる。
「学校はどうしたんじゃ」
『…長旅になると思い退学しました』
「はあ!?お前…無茶する奴だなー」
『ははは…(あたし今物凄い事言っちゃってるよ)』
「まあいいや」
『(いいんだ)』
「で?なまえはこれからどうすんだ?」
『え?…あー』
思い付きで何とかその場を乗り切ったがこれからどうするかなど何も考えていなかった。(寧ろこっちが聞きたい)
「考えてねーんなら俺達と一緒に修行しねーか?」
『え?』
すると、乱馬から思いもよらない言葉が放たれた。