じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


笑うとかわいいよ





「あかね?道場の裏にいるみたいだけど…乱馬くん、首どおしたの?」
『日頃の行いが悪かったみたいで』
「ちげーよっ!」

あかねの様子が気になったあたしと乱馬は天道家に戻り、あかねを探していた。なびきさんから道場の裏にいると聞きあたし達は道場の裏へと向かった。それにしても、隣を歩く首が90度に曲がった乱馬は何とも不気味だ。(思わず距離を置いて帰ってきちゃったよ)



道場の裏まで行くと、ガシャーン!と大きな音が聞こえ、あたしと乱馬は顔を見合わせるとそっとあかねの様子を覗いた。あかねは道着を着てコンクリートブロックを叩き割っており、いつもと変わらぬように見えたが、何だか背中が悲しそうに見えた。(…好きな人の意中の相手が自分の姉なんて、落ち込むよね)そんな事を考えていると、乱馬が静かにあかねの元へと歩いていった。何をする気だ、と見ていれば壁に手をついていたあかねを覗き込んで何故か変顔をして見せた。

「なんなのよあんたは!」

それを見たあかねは当然の如く乱馬の顔を地面へと叩き伏せた。

「なんだ、元気じゃねーか」
「…まさか、励ますつもりだったわけ?」
「まさかとはなんだよ、まさかとは?」
『何で変顔なんかしたの』
「!なまえ。…なまえも?」
『ま、乱馬のせいで台無しだけどねー』
「…おっおっ!首が治った」
『あ、本当。良かったね』
「……」

あたしと乱馬のやり取りを黙って見ていたあかねは、小さく笑うと口を開いた。

「じゃーちょっと付き合ってくれる?」
「『ん?』」




*****


あかねに連れられ道場へ入るとあかねと乱馬は組み始めた。(これがストレス解消とはあかねらしい)


ビュッ!


「ちょっとは打ってきてよっ」
「だーって」

あかねが拳や蹴りを繰り出すが、乱馬は一向に避けるばかり。そんな二人を他所にあたしはワクワクしていた。(だってこの場面ってあの名ゼリフのとこじゃないか!!)道場に入った時、あたしはふと、らんまの話でトップクラスに入る程に大好きな場面を思い出した。そして、その場面がもうすぐやってくる。まさかそれを生で見れるなんて思ってもおらず(当たり前)興奮が高まっていた。

「本気でやらなきゃストレス解消にならないでしょっ。ほら、打ってきなさいよ」
「お前さーそんな怒ってばっかいて疲れねーか?」
「余計なお世話よっ」
「だけどおめー…」
『(!くっ来る…!!)』







「笑うとかわいいよ」







『!!』

「え…」


遂に、来た。あたしの大好きな場面。
…なのに。(…あれ、何であたし…)



トン。

「スキあり」


乱馬は、己の言葉に唖然としたあかねの額を指で突いた。あかねはそのまま床に座り込んでしまう。

「ず、ずるいっ!今のなしよっ!ねえ、なまえ!」
『えっ!あ…う、うん…』
「ほ、ほらっ!もう一回!」
『……』






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