冗談が本当に変わる瞬間
「かすみさん…?」
あれから、あかねは東風先生の好きな人がかすみさんだとあたしと乱馬に話し始めた。
「東風先生、かすみお姉ちゃんが好きなのよ。態度見てればわかるもん」
「『……』」
「三人で何してるんだい?」
あたし達の間に沈黙が流れた瞬間、東風先生が部屋から顔を覗かせた。
「えっいや、別にっ。なあっ?」
『(わざとらしいな…)』
突然声を掛けられ驚いたのか、乱馬はおどおどと返事し、その上あかねに返事を求めた。
「……」
「『……』」
だが、あかねは答える事なく再び沈黙が流れる。
ぱんっ!
すると突然、玄馬さんが膨らませた袋を思いきり叩き割った。(びっびっくりした…!)
【パンダがぱん、だ。なははんちって】
「…あまり意味のない事するなよ」
『…玄馬さん』
玄馬さんは場を和ませようとしたのか、ダジャレを言ったが、あたしと乱馬に冷たい目で見られただけとなった。
「さて、傷見せて」
部屋へと戻ると東風先生が乱馬の傷をまじまじと見つめた。そして、にっこりと笑って口を開いた。
「このボールの跡…あかねちゃんの打球だろっ」
「『!』」
「へ…?どうして?」
思わずあたしとあかねは飲んでいたお茶を音を鳴らし呑み込んだ。
「縫い目のくい込みの深さと角度がポイントだね」
「へー打球にも凶暴性が滲み出るのかなあ」
「なによっ!!あんたがボーッとしてるからいけないんでしょっ!!」
『あかね落ち着いてっ』
「…やだな、本当にあかねちゃんが打ったの?」
「え゛」
乱馬の嫌味にあかねがムキになるのをあたしが宥めていると東風先生は冗談だったのに…と言い出し、あたし達は驚いた。(まー普通ボールの跡で誰が当てたかわかる訳がない)そんな東風先生にあかねは相当ショックだったのだろう、顔を真っ赤にして俯いた。
「いーじゃないか。うん、活発でいいよ」
「アホ」
「だって…」
「元気がなにより」
「色気がねえ」
「うるさいのよあんたはっ!!」
そんなあかねを東風先生がフォローするが、隣で乱馬が余計な事を言う為、あかねは再びムキになってしまっていた。(もーこの二人は…)
「ごめんくださあい」
その時、聞き覚えのある声があたし達の耳に入ってきた。(この声は…!)