じゃじゃ馬にさせないで! | ナノ


足跡って消えないものなの?





暫くして学校へ着くと、あたし達を離したあかねは乱馬の胸ぐらを掴み直し、壁へと押し迫った。

「いい?乱馬っあんまり余計な事…」
「なんだよ、余計な事って」
「だから、東風先生の事とか!さっきなまえが遮ってくれてなかったら……」


あかねは喋りながら、乱馬に違和感を抱き、胸へと視線を落とすと服の留め具を幾つか外し、胸元をがばっと開いた。(女の慎みはどこにいった?)先程の水撒きで乱馬は女になってしまっていたのだ。

「いつの間に…」
「だから待てって…」
『毎日変身してるねー』
「つかなまえも水かぶったはずだろ。何で変わってねーんだよっ」
『乱馬と違って運がいいの』




じ―――――。

その時、背後から物凄く痛い視線を感じた。そんな視線に振り返ると、乱馬の胸元をじっと見つめる生徒達が大勢あたし達を囲んでいた。

「なんだ、おめーら!タダ見しやがって!」
『そーいう問題なの?』
「今朝は誰からっ!?」

乱馬の言葉に突っ込んでいると、あかねは構え出し、そう叫んだ。

すると、生徒の数人が突然泣き出した。

「もはや戦いは挑まん」
「我々一同、涙をのんで…」
「君と早乙女乱馬の婚約を…」
「認める事にしたんだ!!」

そして、生徒達は大々的に決意を発表した。あたし達は一瞬呆気に取られてしまう。

「なっなんのこっちゃい!」
「胸しまって胸!なんでまた…」
『(…あたしに交際申し込んできた男達も一緒に諦めてくれたりするかな)』




「つまり、早乙女乱馬がこの九能帯刀を倒したというつまらんデマが広がった訳だ…。だが、僕は負けを認めん!!」

あたしが呑気に考えていると、生徒達の後ろから包帯ぐるぐる巻きの九能先輩がやってきた。生徒達は未だ泣き止まずに再び口を開く。

「九能は風林館高校最強の男だったが」
「同時に最悪の変態だ」
「誰が変態だ!」
「君の相手が早乙女なら」
「まだ諦めがつこうというもの…」

「あんたも十分変態なのにねえ?」
「同意を求めるなっ」
『もう認めたら?』
「俺が変態ならおめーも変態だぞ」
『(はっ!)』

ひそひそとあたし達が喋っていると、九能先輩は包帯を取りだし、再び口を開く。

「僕は諦めんぞ…」



そして、包帯を取ったその顔は。






『…ねえ、足跡って消えないものなの?』
「俺が知るかっ」

九能先輩の顔は、あの日乱馬が蹴りを食らわしつけた足跡が残っており、何とも面白く情けない顔になっていた。






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