流石、東風先生
あたしに背中を押された乱馬は少し戸惑っていたが、恐る恐るあかねの隣へ歩幅を合わせさっとあかねの顔を覗き込もうとした。だが、あかねは顔が見えない様、乱馬と反対方向へ顔を向けた。
「…ウソだよっと」
痺れを切らした乱馬は、あかねの髪に結ばれていたリボンをくいっと引っ張った。
「いっちょまえに傷ついてやんの、ばーか」
『…(素直に謝れないのか)』
「なによ、ガキ。喧嘩売ってんの?」
「そーそー。そーやって鼻息荒くしてんのが似合ってんぜ」
「なによっ!」
「おーっと」
乱馬の言葉にムキになったかねは鞄を乱馬へと振り回した。乱馬はそれを軽々と避ける。それを見ていたあたしはため息をついた。(どーしてこの二人はすぐ喧嘩するんだ…)(…まあ、確かにあーしてる方があかねらしいけどね)そんな事を思うとあたしはふっと笑いを溢した。
かくっ
「あっ?」
その時、突然乱馬は体勢を崩し地面に膝をついた。
「どうしたのよ」
「足が…」
『…先生にやられたね』
「!(あの時か…)」
あたしの言葉に乱馬は先程、東風先生に腰を叩かれたのを思い出した。あの時、先生が乱馬の腰に細工したのをあたしは気付き、漫画での今の場面を思い出した。(にしてもあんな軽く叩いて歩けなくするなんて流石、東風先生)
「しょーがないな、もう」
するとあかねは乱馬へ背中を向け、腕を自分の肩に乗せた。
「なにすんだよ」
「おんぶ。歩けないんでしょ」
「!ばっきゃろーっ男がそんな恥ずかしい事出来るかっ」
「…ならなまえ、男になっておんぶしてあげてよ」
『あーあたし今足挫いてるから…(嘘)(てか男同士でおんぶもどうかと)』
「…もう」
乱馬の高いプライドにあかねは呆れて息をつくと、目の前に設置されていたホースから水を出し、乱馬へと浴びせた。
「女同士ならいいわけね」
そして、女になってしまった乱馬を否応なしにさっとおんぶし、歩き出した。あたしはそんな二人を後ろから微笑みながら見ていた。