やさしい、いい子
乱馬の体も治り、あたし達はほねつぎを出る。
「乱馬くん、なまえちゃんちょっと」
その時、見送りに来てくれていた東風先生にあたしと乱馬は手招きされ、先生の方へと近付いた。
「あかねちゃんと仲良くしてね」
『あたしは仲良いんですけど、乱馬は…(ちらっ)』
「別に俺は喧嘩したくねーんだけどさ。あいついちいち突っ掛かってくるんだもん」
「でも、優しいいい子だよ」
東風先生の言葉に乱馬は一瞬固まった。かと思えば、すぐに先生にずいっと顔を近付けた。
「どこがっ?」
「そんなに力一杯聞かなくても…。すぐわかるよ。あの子、本当に優しいいい子だよ」
『!』
乱馬の言葉に東風先生は笑うと腰辺りをぽん、と叩いてそれじゃあ、とあたし達を見送った。(今のって…)
「…なに話してたの?」
「別に。あかねは手のつけられねー跳ねっ返りだから大変だろーって。同情されちった」
『ちょっと乱馬っ』
乱馬の言葉にあたしが怒ろうとすると、あかねがぴた、と歩く足を止めた。
「くるかっ」
そんなあかねに乱馬は構える。…が。
「そ…か」
あかねは怒る事もなく、そのまままた歩き始めた。いつもと違うあかねに驚いていた乱馬を、あたしは思わずあかねに気付かれないよう殴った。
『ばかっ』
「いてっ」
『落ち込ませてどーすんのっほらっ』
そして謝るよう、乱馬の背中を押し出した。