本当に鈍感
あたしとなびきさんが会話をしている中、九能先輩はなびきさんの言葉に引っ掛かったのか「ん?」と声を漏らした。
「乱…?」
「いつまで…」
みし…!
「抱いてんだバカヤロウ」
なびきさんに掛けられたお湯で男に戻った乱馬はわなわなと震え、いつまでも己を抱き締めている九能先輩を足で蹴り上げた。
「これでわかっただろ。あばよ」
流石に、ずっと抱き締めていた女が男になったのを見れば誰でも同一人物だと気付く。だが、九能先輩を舐めてはいけない。
「待てい早乙女!!おさげの女をどこに隠した!」
どうやら、九能先輩はまだ乱馬とおさげの女が別人だと思っているらしく、つまらん手品だと吐き捨てる。(本当に鈍感…いや、ただのバカだ)
「あ…あのなあっ」
『これはつまり』
「はっきり言わないとわかんないらしいわねえ」
なびきさんはふう、と息をつくと九能先輩を乱馬とあたしから少し離れた場所へと呼んだ。(…何かまたあたしまで巻き込まれそうな予感)
「いい?あの女の子の心も体も…みぃ〜んな乱馬くんのものなの。わかるわね?この意味。あ、ちなみになまえちゃんもあの男の子のものなの」
「(どーん!!)心も…体もだとっ!!」
なびきさんから何を聞いたのか九能先輩はまるで火山が噴火したように怒りだし、あたしと乱馬を睨み付け木刀を振り回し始めた。あたし達は一斉にそれを避ける。
「なんか誤解してるだろっ」
『(この時って確かなびきさんがおさげの女は全部早乙女乱馬のものって言ってたような…にしたって)な、なんで俺まで…!』
「やかましいっ!大方きさまら…」
そう言って九能先輩は突然俯き、何かを想像したのか手で顔を覆った。
「哀れな…っこの女の敵!!」
「『妙な想像をするなっ!!』」
そして再び襲い掛かってくる九能先輩にあたしと乱馬は思わずハモった。
「きさまらを倒して、力でおさげの女となまえくんを救い出す!!」
『は!?なっ何であた……なまえが出てくるんですか!?』
「きさま!なまえくんに対して慣れ慣れしいっ!」
『(なびきさん一体何言ったのー!!)』