パンダと女
深い泉へと沈んでいくあたしは本日二度目の死を覚悟し…気を失った。
「……くさん、お客さん。しっかりするね」
『…ん』
誰かの呼ぶ声にあたしは目を覚ます。ゆっくりと目を開けると先程の片言を喋る男があたしを覗き込んでいた。
『…死んだかと思った』
既に生きているのか死んでいるのかはわからないが、まさか一日に二回も死を覚悟するとは思わなかった。(泉に落ちたら大変って言っていたけど…別に何ともないみたいだし…)あたしは男の言葉を思い出し、体に異変が無いことを確認する。服が水を吸ったせいか少し体が重く感じるくらいだ。
「大丈夫よお客さん。泉に落ちたくらいじゃ死なないよ。ただ…」
「てめーのせいだぞ、くそおやじ!」
【お前がぶつかったからだ!】
男の言葉を遮り、先程の女の声が聞こえてきた。その声に後ろを振り返るとそこには、先程の大きな影の正体であろう、パンダと、どこか見覚えのあるような赤い髪の女が言い合っていた。(パンダが板使って言い合ってるよ……って…)脳裏でそんな事を考えていると、ハッと、何かに気がついた。
『…ら…んま…?』
「…ん?あ。気がついた。さっきはぶつかっちまって悪かったな」
『……』
「おい、聞いてんのか?」
『…うそ』
「?なにがだ?」
(そうだ…思い出した…!)
先程から考えていた見覚えのある景色、見覚えのある人物が誰なのか、今はっきりと思い出した。そして、あたしは目の前の光景に信じられないでいた。
もし、あたしの予想通りであれば今目の前にいるのは、早乙女乱馬と、早乙女玄馬だ。
(……まさか、まさか)
嫌な予感が、する。
(あたし……らんま1/2の世界にいる…!?)